第1回 青柳 誠さん(Pf、Keyboard、Sax)


 新コーナー第一回目の記念すべき方は、その昔「ナニワ・エクスプレス」のキーボード、サックス奏者として関西のライブシーンで活躍し、その後上京、ピアニスト、アレンジャーとしてさまざまなアーチストのサポート、ライブセッションや、先頃アルバムも発売された自己ユニット「トライフレーム」などで超売れっ子の青柳誠さんにお話を伺いました。なお、インタビュアーはゲストブックでおなじみの「キャノンボール・あ・誰?」さんです。


使用楽器

テナーサックス
フランスセルマー、マーク7、製造番号28万台
マウスピース:デイブ・ガーデラ/ブランフォード・マルサリス・モデル
リード:イシモリ2 1/2

ソプラノサックス
セルマー、SERIE3シルバー(ネックのみゴールド)製造番号49万台
マウスピース:BARI-64
リード:バンドレン2 1/2

影響を受けたplayer

ソニー・ロリンズ、デクスター・ゴードン、デイブ・リーブマン

お薦めアルバム、CD

A NIGHT AT VILLAGE VANGUARD/SONNY ROLLINS

いずれも、「サックス」に限定して書いています。サックスを堪能するには、やはりサックストリオが一番です!

ホームページ: http://ccc.ai-net.co.jp/aoyagi/
(ライブスケジュール等はこちらでご確認下さい)


青柳さんとあ・誰は、結構古くからの知り合いで、インタビューというよりは仲間うちのなごやかな雑談という感じで終始しました。


青柳さん(以降、青):MD入ってる?チェックチェック、あ、あほ柳です。(笑)

あ・誰(以降、誰):知り合った頃のこと、覚えてる?私あんまり覚えてないねん。

青:僕もあんまり・・・(笑)

誰:ふふふ。知り合った当時はナニワ・エキスプレスの全盛の頃で。

青:全盛の頃っていつやろ?

誰:ライブとかガンガンやってた頃で。当時、青柳君はkbとsaxと両方演奏してた。そもそも、どうしてsaxを吹くようになったんですか?

青:どうしてでしょう?なんか、(saxの)音色が頭の中にあったんでしょうね。ブラスバンドに入った時既に僕はtsを吹きたいと思ってて。なんでテナーに行ったか不思議やね。高校生の時、既にジャズが好きで、テナーのプレーヤーが好きだった。中学生の頃からDexter Gordonとか・・

誰:渋い中学生やねぇ。私は子供の頃、親父(バンドマン)が家でSonny ClarkeとBenWebsterをかけると「お父さん、やめて」って言うてたらしい。「たるい」と思ってたみたい。Cool Struttin'のジャケットは綺麗やけど、かけたくなかったもん。

青:Ben Websterももしかしたら、僕はその頃好きやったかもなぁ。なんか親父やねぇ。(笑)だいたい(Oscar) Petersonから入って、あの頃、そんな何枚もレコード買える訳じゃないし、FMなんかでSonny RollinsとかJohnny Griffinとか聴いてレコードを集め始めてて。中学生の時drもやってて。Art BlakeyとかMax Roachとか。そういうのが好きやったんです。元々はBuddy Richが好きでジャズに目覚めたから。

誰:へぇ、こてこてのジャズ好きですね。

青:フルバンみたいなのが好きでね。そっちから来て、エレクトーンは既に習ってて、天才少年みたいに言われてて、それだけで終わりたくないからdrもやってて。でもdrだけじゃなくて、高校生になって「ようやくsaxが出来る」ということで。で、ブラスバンドに入って、始めたということを想い出したよ。

誰:そんな青柳誠天才少年が、なぜkbを中心にやろうと思ったの?

青:それはやっぱり、saxをやってるのがもどかしかった。もっといっぱい頭の中に音が鳴っているのに・・

誰:それを具体化できない。音として。

青:そうそう。元々saxを始めた時から音的に色々知ってたから、練習しなかった。基礎練習みたいな、ロングトーンも特にしないし。フレーズが吹けたから、それで曲が出来るからその面白さに溺れて。でも頭の中ではもっと色んなフレーズが鳴ってるんだけど、そこに到達できないのがもどかしかった。ちょうどその頃pfで「これは自分の音だ」というものを見つけてしまって。俺はやっぱりpfの人だと勝手に思ってしまった。今考えるとそれが良かったのか悪かったのかはわからないけど。今では、pfなら調律が悪くてガタガタのpfでも、その音(自分の見つけた音)をイメージしながら、そこへ到達できる自信がある。それをpfで初めて経験してしまって、でも saxはプロフェッショナルというということを捨てて、好きなことを好きな時に吹こうという感じになった。一年以上かかったけどね。もどかしい、悩んでた時期が一年ほどあった。

誰:練習してまで、saxでいこうとは思わなかった。

青:練習嫌いやったからね。逆にpfをそれまで練習してきて、もっと自分の音を表現できる楽器やったから。それ以上色んなものを追及する時間ももったいないし。でも、ナニワでそれまでに録音した曲なんかで、saxでやらなくちゃいけない曲もあるし、でもそういう曲もpfとかでやるように段々変更していったけどね。バンドの中で。文句言われながら。(笑)で、saxはやっぱり自分のものじゃないなぁという感じがしてたけど、一年以上かかってふっきれて、吹きたいことを吹きたい様に吹けばそれで音楽になるじゃないか?と思うようになって。しばらく全然吹かない時期もあったけど。そうしたらもう、自分はこういうのは出来ないけども、別のこういうメロディーとか、こういうアドリブだったら出来るというのが自分ではっきりわかるから、自分がアレンジしたものや、ジャムセッションとかだったら進んで出来る。自分がアレンジするものだったら、得意なところに持って行って、それだったら出来る。(笑)人からみたらそれはアマチュアということやろうけど、僕はそれでいいなぁと思って。そんな楽しいことはないなと。例えばここは「パラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラと吹きなさい」と譜面に書いてあったら出来ないけど、ここは「好きな様にソロやって」って言われたら「ズゥビズゥビ〜〜〜〜〜アハハ〜〜〜〜〜」ってやって、それでいければそれでOKかな?と。ピアノとは分けて考えてるね。

誰:for joy なわけや。

青:そうそう。完璧にね。で、for joyの中で仕事になる、お金になる場合は、仕事してます。(笑)

誰:それはいいやん。プロって最低限これだけ出来ないといけないっていう線って、何となくはあるやん?だけどそれって微妙やん?「パラパラパラパラパラパラパラパラ」って出来なくても、「ズゥビズゥビ」みたいな人でも、それが欲しいからと依頼されて、演奏したり、唄ったりしてる人もいるやん?だからそれはそれでいいこと。

青:そうそう、そういうプレーヤーが身近にいるアレンジャーやと思っている。(笑)そういう(ズゥビズゥビのタイプの)人を借り出したかったら、ものすごい身近な青柳というやつを呼んできて、それに吹かす、という考えやね。

誰:そいでこないださぁ。最近またsaxの練習もしてるって。

青:いや、練習とかはしてないけど。

誰:小池さん(小池修さん)に教えてもらってるとか言うてたやん?

青:あぁ、数年前にね。有美ちゃん(谷村有美さん)の仕事で、あるツアーでsax吹くという演出があって、何十本というツアーで、毎日sax持って行くわけでしょ?で、せっかくやから、楽屋で教えてもらってたんですよ。

誰:その時は小池さんもメンバーだったわけ?二人で吹くわけ?

青:バトルも一瞬あったりね。(笑)

誰:え〜っ?そういうパラパラパラパラパラの大家みたいな人とのバトルはどうでした?

青:いやぁ、こっちは別にね。あ、ここで一番大事なことは、って講座みたいになってきたなぁ。もしsax奏者だったら、パラパラパラパラパラと横で吹かれたら、こっちは落ち込むかもしれないけど。

誰:あ、負けた!みたいな。

青:そうそう。僕もpfなら負けたと思う場面はあるやろうけど。でもそのsaxはすごい楽しいわけ。

誰:でもさ、万が一、十両が横綱に勝つこともあるんよね。誰にでも出来るもんじゃない様な技術:対:ズゥビズゥビダァ〜〜でも、それはそれで、音楽になってたら楽しいやろうね。見てる方も。


誰:ミュージシャンとして、これまで続けてこられたわけでしょ?才能とか感性とか努力とか運とか人徳とか根性とか色々なものがあって、今日まで続けて来はったと思うけど、色々な壁があって、乗り越えて、諦めた壁もあったかもしれないし、自分の中で、性格でもいいし、ポリシーでもいいし、何でもいい。これがミュージシャンとして続けていくのに幸いしてたっていうものってあります?

青:う〜ん・・・

誰:私の場合は、3つあるんですよ。まずは性格。割と、寝たら忘れる。(笑)

青:それは大事やね。みんな悩んでるくせに持ってるよね、それ。

誰:それから、芸人の家に生まれたから、原点がありすぎて、だから逆に逃げられへん。親戚中サラリーマンが一人もいない家系に生まれたから。それから、もう一つはたまたま歌やったから、歌い始めた記憶がないから、終わられへんのですよ。その3つがあるから何かあっても「しゃーないな」ということで続けてこられた。青柳君は?

青:ほぉ、なるほど・・でも僕もその3つの要素全部あるわ。始めた時期がわからない。気がついたらやってたし。父親ウクレレ奏者やし。僕が生まれた時は公務員やったけど。バンドの人間関係が嫌で音楽やめたらしい。

誰:あぁ、ちゃんとした人やったんですね、お父さん。

青:ちゃんとしてるかどうかわからないけど。それと、僕も寝たら忘れるしな。でも、本当は続けられたのは、僕自身としては、やっぱりさっき言ったような、pfの自分の音を見つけてしまった。お金をもらおうと、もらうまいと、人がけなそうと、喜ぼうと、自分の音を見つけたってことは、もう自分にとって、絶対的な確信があるわけですよ。

誰:喜びとか、価値?

青:価値っていうと、ちょっと大げさかもわかんないけど。単なる事実。いかなる場合も発揮できるし。調律の悪いpfでも、それなりにイメージしてやれば、その場の最高の音は出せる。PAの状況もあるし、悪条件はあってもその中でそういう世界が自分の中にあって、その世界があるからやめられへん。ていうか、やめる必要もないし。プロをやめるかもわかれへんけど、音楽自体はやめない。それと、さっき言ったこととダブるけど、saxを吹いたっていうこと自体で、プロの世界を捨てて、アマチュアでやろうという意識が働いた時にこんな楽しいものはないと、そういう気持ちにいつでも行けると。その2つがあるから、もうやめようがないって言うか。プロはやめるかもわからんけども、自分の世界を確立したという事実が、自分の気持ちの中の大きい部分を占めてるから。それを忘れ去ることはないやろうしな。それが起動力でね。何か嫌なことがあってもそこに立ち返れば、乗り越えられる。って言うと青春ものみたいやけど。

誰:それはわかる気がする。

青:プロのミュージシャンの結構の人がそういう世界、持ってるよね。あ、でも意外と持ってない人もいるよね。「あ・誰」はすごく持ってるの、僕わかるし。

誰:いやぁ・・・私はねぇ・・・まだまだ向上して、まだまだ深くならなあかんと思ってて。世間の人はすごいとかうまいとか言うてくれるけど、そんな言葉は、今の自分に対する満足度からいうと、全然アカンね。私はだいたい、歌がうまい人やとは思ってないから、自分で。

青:あぁ、そうなん?

誰:うん!歌を歌うことそのものは、どっちか言うたら下手やと思ってるから。歌うことそのものが。例えば、saxならsaxの理想の音というのがあるとするじゃないですか?「ええ音してるね」とか「このpfよう鳴ってるね」とか言うやん?そういう意味では私は自分を鳴らすこと、歌を歌うこと、個性はどうでもいいから、アイススケートでいうコンパルソリ。そういう技術点やったらアマチュアの人の方がずっとうまい人いっぱいいると思ってるねん。

青:あぁ、そぅお?

誰:まず声が出ない!出ないから無理やり出してる。

青:(驚)あぁ、そうなん?

誰:うん。もう首がこってこって(笑)もうちょっとなんかこう、うまいこと声が出ないかな?ってね。でもね「本物の歌を歌いたい」っていうことだけがあって、でも自分にとって「本物とはなにか」っていうのは言葉ではわからないんですよ。説明できないんです、まだ。でも。体感はできる瞬間はたま〜にあんねん。「私は今、いけてるぞ」って。

青:たまに?たま、じゃないでしょ?

誰:最近は割と多くあるけど、やっぱりたまに。本当にもう、いわゆる、イッてる状態。何も考えてないけど、何もかもわかってる状態。それは練習とか、playerとの勢いとか、その時のお客さんの状態とかの渦でそうなるのかもしれへんけど。でも、本当の歌とはなにか?ということと、自分が歌でどれだけ努力できる人間なのか知りたいから明日も歌おうと思ってんねん。

青:う〜む。

誰:私の場合はね。人を楽しませようとか、entertainていう気持ちはほとんどない。test受けてる状態。私はこんなんです。こんな人間がいてますよ、と。歌ってます。好きなんです。でも、チャージ3千円の値うちがあるかどうか、どうぞあなたの感性でjudgeしてください、っていう全開状態。

青:(驚)あぁ、ほんとに?

誰:素っ裸!「どや!?」という感じ。楽しんでもらいたいよ、もちろん。でも意識して楽しませよう、みたいな。例えば「この服着たら彼氏喜ぶかな?」みたいなのは全くと言っていいほどない。

青:ええ?そお?(疑)

誰:冷静になってる時はあるよ。この衣装着て、MCはこうしゃべって、それほど歌いたくない曲やけど、ヒット曲やからみんな喜ぶやろうから、歌おうかとか。でも、一旦ステージ始まってしまったら、それを考えられない。

青:それは考えてなくてもそうしてるっていうのもあるよね。意識してなくても自然にそうしてる人もいるし、全然してない人もいるやろうし。それは、まぁ、考えてないってことやね?

誰:私って、人前で歌ってない歌の方が多いんですね、自分の人生の中で。で、鼻唄が歌えない。鼻唄うたったら、どんならん。無茶苦茶なんですよ。on かoffしか出来へんから、掃除しながら歌ってても、onになってきたら、掃除機をば〜んと放って、掃除機はどこかでブ〜ンって鳴ったままになって、涙流して歌ってる自分にはっと気がついて「あぁ、掃除しなくちゃ」ってまた掃除始める毎日なんです。もう恥ずかしいですよ。

青:毎日、掃除機との戦い。あはははは・・・

誰:お父さんが隣でひげ剃ってたら、ひげ剃りの音がブ〜〜ンって鳴ってて。それに合わせて「与作は木を切る〜」って歌うやん?

青:なんじゃ、そら?

誰:お父さんのひげ剃りはずっとコード変らへんでしょ?だから「りんご追分」とか、「サマータイム」みたいなんしか歌われへんねん。

青:あぁ、なるほど。

誰:コードの進行がないから。コードって言わへんけど。

青:ふはははははは

誰:そうすると、もう与作のこと「く〜〜〜」って考えるわけ。「与作に会いたい!」ってなって(両手を胸にあてるポーズ)。するとお父さんが横で、そんな私に「お前、何してんねん?」って、それで我に返る。そんな毎日だったんですよ。だから歌う時に加減というものができないんです。意識上では全くできないんですよ。歌うか、歌わないか。

青:それは・・・イッてるっていう状態やね、要するに。(笑)

誰:カラオケなんかでも、めちゃめちゃ真剣なんですよ。

青:いや、カラオケは誰でも真剣でしょ?

誰:座って歌われへんから、立って歌うしね。

青:あははははは

誰:まぁ、そんな私があるから、自分のサウンドを見つけるということは何となくわかるんですよね。で、どんだけ自分が歌で努力できるのかの実験人生。私の場合はね。それでもちろんみんなにも楽しんでもらえたらそれはそれでいいことやけど、楽しませようという意識はない。

青:それを意識しないで常に出来るんやったら、本当の天才やね。

誰:いやいやいやいやいや。とんでもない。

青:いや、ほんまにそうやと僕は今思ったよ。僕はすごく意識してやってんねんやと思ってた。

誰:それをしたら・・・

青:意識してやったらシラこい、かな?

誰:お金という意味じゃないギャランティーを求めてしまう。私ね、けなされても「どんな歌やったっけ?」て言われるのが一番悲しい。まぁ、幸いこれまでそれは言われたことないんですけど、「大嫌い」「こんな下手くそ」「虫酸が走る」「嫌、この声」って言われる方が、その人の世界に歌で触れることが出来たってことやから。「どんなんやった?」って言われたら、歌った甲斐がないじゃないですか?

青:それは寂しいね。

誰:「忘れた」とか「え?やってたん?」とか。でも私にとってそういう音楽ってたま〜にある。なるべく言わんようにするけどね、言わなきゃいけない状況になっても。歌い甲斐、っていうのは何か?っていうと、歌ってなかったら出会うことも触れることも出来へんかった人たちに出会えて、触れられた。それが私の歌い甲斐ですね。・・・私のインタビューになってるやん。(笑)


誰:LAなんですけど。(小池修さんのレコーディングで青柳さんはアレンジとピアノを演奏されました)素晴しいレコーディングだったそうで。

青:ほんと、盛り上がりましたね。

誰:2曲ぐらい聴かせて頂きましたが、おっちゃんは感動しておられました。誰よりもパラパラ吹けるおっちゃんは。日本で上から数えてすぐの、素晴しいサックス吹きのおっちゃん、このあと、きっとこのコーナーにも登場してくれると思いますけど。そのおっちゃんは感動してましたよ。

青:なんか、そん時はまぁ普通にやってるなぁって感じで。こっちは小池さんのサックスをブース越しに聴いてたから、いつも通りかなって感じだったけど。でも、よく考えたら、今まで小池さんが英語でしゃべってるのを聞いたことなかったのに、その日しゃべってるのよ、突然。「これはミシェル・ペトルチアーニに捧げた曲です」とか、色々ちゃんと英語でしゃべってて、みんな「おぉ、そうか」っとか言いながら。「じゃぁやりましょう」とか言って。

誰:通じてたんや。

青:うん。それは、いわゆる、英語がしゃべれるようになった、とただそれだけじゃなくて、音楽に対する熱意。あの年になったら、って言うとおかしいけど、何かきっかけとか、心を動かされるものがなかったら習得できないでしょ?子供の頃の様に「勉強しなさい」「はい」では出来るもんじゃないし。でも、小池さんは世界に通用する音楽をやろうってことで、もちろん今までもやってたけど、そこで一段次のことを考えた時に、そこ(英語)へ行ったんじゃないかな?と思うねん。

誰:意気込みっていうことね。

青:ちょっと一年か二年前に、外国へ行ったら、あれ?って思うぐらい小池さん黙ってた人やのに、自分のアルバムのレコーディングの日になったら、もうそこでちゃんと英語がしゃべれるように、聞けるようになってた。それはすごいことやね、と、思ったりなんかして。まぁ、そんな抽象的なことを言っても分かりにくいと思うんやけど。

誰:いやいや、抽象的じゃないじゃないですか?具体的に、彼の意気込みを、ある、音楽以外の形で体感したわけでしょ?

青:そうそうそうそう。音楽的にも、やっぱりね、すごい、なんていうか、小池さんはNYが好きみたいで、LAだからちょっと違うかもしれないけど、いわゆるアメリカ音楽への憧れというものを、憧れじゃなく自分の音としてやるということにこだわってるところがものすごい出てて、向こうのミュージシャンからもすごい絶賛されてたけどね。「日本行ったら是非一緒にやりたい」ってpfの人も言ってたし。ほんと、いい感じでしたよ。も一つ良かったのはエンジニア。何ていう人やったっけ?ど忘れした。

誰:アル・シュミット!

青:そうそう。ブースで、マイクここらへん(吹いているサックスとは全然無関係な方を指さして)にあるんだけど、小池さんはパラパラ〜〜と吹いてるわけ。で、アル・シュミットがEQして作ってるわけ。それで「じゃぁやりましょう」っていった時に、何のチェックもなしに、ぱっとマイクの前で吹いたら、もうそれで混じってるわけ。

誰:いや、それはね。一流の人はどこの世界でもどこの分野の人もそうですよね。私は一流のシンガーやなんて思ったことない。だけど、度胸だけは一流やと思ってて。青柳さんの様に絶対音感はないけど、絶対度胸はあるねって言われてんねんけどね。

青:あはは、それ使えるね。

誰:何かそのゆるぎない何かがあれば、本当に同じ勢いでやってる人とは、何も言わなくてもできますよ。だからきっとそうやったんやと思う。小池さんもいくら英語がしゃべれるようになったと言っても、ぺらぺらにしゃべれる訳じゃないと思うねんね。でもsaxというものに対して、音楽ということに対して、saxを通して表現するんやけど、その勢いが本物やったんやねgenuine、だから本気でengineeringしてる人と、同じものが引き合って、あんまり何も言わなくても出来た。それは、すごいその感じ、わかるわ。

青:音楽的な細かいこといえば色々あるけど。今言ったことが僕の印象に残ってること。僕は2曲アレンジさせてもらって、2曲pf弾かせてもらって、その空気に触れられたし、よかったなぁ。pf弾くにしてもアレンジにしても、もちろんまだまだもっとああいう風にできたら、こういう風にしたらよかったみたいなことは思うけどね。

誰:楽しみですね、リリースが。


誰:それではこのHPをご覧になっている、今一生懸命練習したりしているsax playerのみなさんにmessageというか、何かお願いします。

青:たまたま僕の立場を利用して、というか。僕はsaxもやるし、pfからsaxを見るともあるし。で、voとpfだったら、voが前にいて、音楽的にもフロントになるというのは自然な成り行きやけど、pfとsaxの場合、saxの人がバンマスで、俺のバンドで俺のサウンドを弾いてくれという場合もあるし、その逆でpfがバンマスでsaxはこう吹いてくれ、というのもあるけど。でも、基本はどう考えても、saxの方が花形な訳で。例えばbと比べるとね。それは、例えばお金持ちの家に生まれた人とか、ものすごいスタイルのいい女性とか、ものすごいハンサムな男とか、その人が既に持ってるポイントなわけ。それをsaxの人はうまく利用するべきだと思う。voの人はうまく利用できてるけど、saxの人は案外うまく利用できてないと思う。もちろんうまく利用してる人もいるけど。こんな抽象的なこと仲々伝えにくいね・・・

誰:いやいや。saxという楽器自体に花があるということ。

青:そうそう。その楽器を選んだことで、役割分担、まぁプロフェッショナルという部分かもしれないけど、人にアピールする役割、広告塔になる役割を背負ってるはずなんやね。それに背を向けずにやるのがいいんじゃないかな?特に、日本人はシャイな人が多くて、例えば「俺はソロなんかいりませんよ」とか「ちょっとここは目立つし、難しいから、間違えたらいかんから、ピアノでメロディーいっとってください」とかそういう消極的な考えは一切捨てた方がいいと思う。多分サックス吹きということを選んだ場合、それは意識的に絶対排除していかないとね。どの楽器でもそうやけど、例えばbの場合「いや、ここはやっぱり前を立てて」っていう形をやっても音楽的にも商業的にも成り立つけど、saxでそれをやると不細工。

誰:saxという楽器が持ってる宿命みたいなものを、ちゃんと真正面から受け止めた方がいい。

青:そうそう。それを意識して考えて、練習・本番をやっていく。特にそういう意識を持たずにやっぱりアマチュアの人とか「練習して何とかうまくなるんだ」「こんな曲がこんなフレーズが吹けたら、人と演奏する時は」とかみんな考えるけど、そこ(フロントであるということ)を考えてやってる人は少ない。そこはみんな相当行った時に、考え始めるんやけども、あらかじめ、そこから考え始めた方が早いと僕は思うね。なんかすごい抽象的な話しやけど。

誰:いやいや、アドバイスありがとうございました。そんな訳で、色々聞きたいことはあるけど、終わり。


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