第41回 試奏レポート
ヤマハ82Z

 ヤマハのサックスのラインナップが一新されました。中でも注目は「ザ・サックス」誌のvol.5の表紙でもフィル・ウッヅ氏が抱えていた82Zという新機種です。


 9月からヤマハのサックスのラインナップが変更され、275、475、62(ソプラノは675)、875、875EX(アルトのみ)という製品群になり、ケースもストラップ付の軽量ハードケースになったことは皆さん既にご存知と思いますが、それに加え、今月82Z(アルト、テナーのみ)という新製品が発売されました。

この楽器は従来あった62がアメリカでジャズやポピュラー系のプレイヤーに非常に評判が良かったことから、昔の62の設計をベースに最新の設計技術とノウハウを注入して作られた楽器です。元々その昔の62という楽器はセルマー・マークVIの設計を忠実に再現したもので、トム・スコットはじめ、アメリカのスタジオ系プレイヤーには支持者が多かったんですね。

今回開発された82Zは基本設計は昔の62(ようはマークVI?)で、地金はカスタム・シリーズと同じ輸入フランス材(ようはセルマー社と同じ地金?)で作ったということです。
さらにここに音響焼鈍という新技術(これがどんなことをしているか?というのは企業秘密らしく、詳しくは教えてもらえなかった)を導入しているそうです。トーンホールや音程補正は一部変更しているとのことでした。

私は試作機段階から吹かせてもらっていたので、この楽器が結構気に入って、発売前からノーラッカー・モデル(UL:特別受注生産〜フィル・ウッヅ氏や織田浩司氏も同じモデルを使用)を注文していたんです。ヤマハ講師はメーカー補助制度がありますので、かなりお安く購入する事が出来るのです(笑)。
11月2日に届いて購入してから今日で2週間位ですが、その間先日(11/9)のビッグバンドのライブでもこの楽器でリードを吹きましたが、他の楽器の音圧にも負けずに気持ち良く吹くことが出来ました。

 音の傾向は、従来のこじんまりまとまったどちらかというとクラシック向けのカスタム875と比べると、逆に太くワイルドな感じで、抵抗感も強く、かつ音量の変化に追随した表現の自由さに富んでいるといえるでしょう。音色自体はヤマハ特有の明るさも持っていますが、色々比較検討した結果、後期の20万番前後のフランス・セルマーのマークVIの音色と吹奏感が一番近いような印象を持ちました。
今までの無難な楽器を市場に送り込んでいたヤマハのコンセプトとは全く違った楽器だと思います。
「何でこんな楽器が今まで作れなかったの?やれば出来るんじゃない!」
というのが、率直な感想!
ただ、875に慣れた人には息を入れるポイントがかなり違うので、違和感を覚える人もいるかも知れません。とにかく思い切り良くスポーンと息を入れて吹かないと鳴らないんです。

 これは明らかにジャズ、ポピュラーのマーケット層にターゲットを絞ったヤマハの力作といえるでしょう。
写真でも分かるかと思いますが、ノーラッカーの私の楽器は既にヴィンテージ物のように酸化してくすんで渋い色になりつつあります。ラッカー仕上げよりも響きが良く、指にまで振動が感じられます。

ヴィンテージ購入を考えている方は、一度この楽器を吹いてみてからでも遅くないと思いますよ。

定価表

  ラッカー仕上げ ノーラッカー仕上げ(受注生産)
アルト \310,000(YAS-82Z) \350,000(YAS-82ZUL)
テナー \350,000(YTS-82Z) \395,000(YTS-82ZUL)

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2002/11/15