第40回 試奏レポート
“IO”

 注目の新ブランドが出てきました。
トランペット“XO”シリーズで新たに数多くのユーザーを開拓し、好評を博した(株)グローバル社が満を持して発表した新シリーズ“IO”です。


IO(イオ)とは木星の周りを取り巻く衛星の名前だそうです。
これを聞いてピンと来る人はかなりの業界通と言えるでしょう。
そうです。日本のグローバル社が、開発、設計したものを台湾のジュピター社の工場に生産ラインを作り、組み立てまでを台湾で行っている楽器なのです。
日本の設計プロジェクトチームと台湾の製作プロジェクトチームががっちり手を組んで、さながら恒星と衛星の関係のように動いている事からこの名前を付けたそうです。
何故、台湾なのか?というと、“XO”“IO”で使用している地金(真鍮)が日本のJIS規格に合致しない特殊な配合なためだそうです。逆にいうと日本製の真鍮はメーカーが違っても基本的には成分は一緒ということが出来るわけですね。

設計プロジェクトのリーダー中山茂氏は国立音大サックス科出身。ご自身がセルマー・マークVIを愛用されていた事から、音色的にはかなりマークVIを意識したとのことです。
扱い易く、シンプルに、そしてメンテナンスも楽に出来るように、などを基本コンセプトに試作を重ね、やっと製品化にこぎつけたということです。

今回、グローバル社のご協力を得て、アルト、ソプラノ両機種をかなり長期間試奏する機会を頂きました。以下にその印象をまとめてみたいと思います。

 まず、外見ですが、IOの銀色のロゴプレートがかなりカッコよく目を惹きます。そして豪華な彫刻、なんと手彫りなんだそうです。手で触るとザラザラして、機械彫り彫刻とは全然違う手触りです。模様は「牡丹と蝶」、花札さながらです(笑)。中山氏のこだわりがこんな所にも見受けられます。
管体部に着目すると、座金がほとんどありません。ほとんどのポストが直付けされています。その代わり、一つ一つのパーツがかなり大ぶりで、シャフトも太く、持った感じは重量感があります。管体自体の響きを大切に、あまり抵抗感を持たせずに、パーツで抵抗感を出そう、ということなのでしょう。「しっかりした丈夫そうな楽器だな」というのが第一印象です。
ソプラノはデタッチャブル・ネックで、カーブとストレートの2タイプのネックがあります。写真でご覧頂いているように、私はストレートが気に入っています。High-Gキーも装備されています。

 次に吹奏感ですが、抵抗感がかなりしっかりあるのですが、レスポンスは早く、息が音になる際の効率の良さを感じます。
芯のハッキリした太い密度のある音色です。かといって、まろやかな甘さも持っています。
ヌケるまでには結構時間が掛かる楽器です。私も今で2ヵ月あまり吹いていますが、どちらも劇場公演やライブでほとんど毎日使用していたにもかかわらず、まだまだ新品の鳴りといった感じです。実に面白い楽器です。

 気になる価格は、定価がアルトで24万円、ソプラノ27万円、テナー、バリトンは未定だそうですが、テナーで約30万円前後、バリトンは40万円台になる見込みだそうです。
 私の「安いですね?」という言葉に
グローバル:「いや〜、うちは後発ですから、この位でスタートしてまず皆さんに認知して頂かないとねぇ、でも本当はアルトでも40万円台位の定価設定をしないと割りは合わないんですよ。」
私:「じゃあ、儲からないじゃないですか?」
グ:「えぇ、儲けは考えていません。5〜6年でラインの型の代金の元が取れれば良いかな?と思っています。」
私:「えっ!(絶句)」

 ともかく、楽器の新しい選択肢がひとつ増えたということは、私たちサックスを吹く者にとっては喜ばしい事です。
皆さんも実際に手にとって吹いてお確かめ下さい。

尚、この記事を書いている段階での取り扱い店は下記3店舗のみです。

山野楽器ウィンドクルー 03-3366-1106
DAC 03-3232-8631
三木楽器心斎橋店 06-6251-4596

楽器についてのお問い合わせは、(株)グローバル 03-5389-5111へどうぞ!
http://www.global-inst.co.jp


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2002/11/15