マイケル・ブレッカーin大阪ブルー・ノート

マイケル・ブレッカー(T.Sax)
ジョーイ・カルデラッツォ(Piano)
ジョン・パティトゥッチ(Bass)
ジェフ・ワッツ(Drums)


 去る9月22日、台風の上陸した大阪は、昼の暴風雨が嘘のようにおさまり蒸し暑い夜を迎えていました。「俺達もステージで台風のように暴れるぜ」と、ロック・ミュージシャンのようなことを言うマイケル・ブレッカーを聴きに大阪ブルー・ノートへ行ってきました。
私は、この日の2nd Setを見たのですが、会場は路線によっては不通の交通機関があったにもかかわらずほぼ満席。マイケルの言葉通り熱いステージを堪能してきました。

・音色
 私は彼を生で聴くのは、6度目なのですが、今までは大きな会場や、ブレッカー・ブラザースとしてのライブだったので、PAを通した音を聴いていたわけです。
しかし今回はアコースティックなジャズ・カルテットだったせいか、前から2列目正面という好位置に座れたためか、ほとんど生の音を聴くことができました。
 それによって感じたことは、意外にも彼の音は良い音なのですが散りやすい音質であった、ということでした。こう書いてしまうと誤解されそうなのですが、かく言う私も20年近く彼のファンで(私の演奏スタイルは彼とはまったく違いますが…)ずっと彼のプレイを聴き続けてきたのです。今までは、やや線は細いが、締った良く通る音、というイメージを持っていたのですが、今回はやや開きぎみの平面的な音、という印象を持ってしまいました。彼自身もマウスピースとリードの組合せはわりと変えている、と何かのインタビューで答えていたので、単にベストセッティングではなかったのかも知れません。
しかし、低音域のサブトーンからフラジオ音域までスムーズに楽器は良く鳴っていました。

・ステージ
 登場した姿は、TVドラマ「ER」のグリーン先生そっくり(わからない人ごめんなさい)。1曲目からおなじみのブレッカーフレーズのオンパレード。いつ見ても物凄いテクニックで、タイム感もまったく崩れずにぐいぐいインプロヴィゼーションを展開していきます。
 ここで、初心者の方にご忠告。彼の指の置き方は、指の関節を伸ばしたままベタッとしているのですが、うかつに真似をしないで下さい。彼の場合は、完全に力が抜けていて速く動き、ストロークも最短距離になっているのですが、これを下手に真似しようとするといたずらにストロークが大きくなってしまい、指に力が入ってしまいます。やはり基本は指の関節を軽く曲げ、キーを垂直に押さえることです。

 この日のハイライトは、4曲目の「ラウンド・ミッドナイト」でした。前回の来日時に「ニュース・ステーション」で演奏し、その後最新作の日本語版CDのみボーナス・トラックとして入っていた「スカイラーク」の演奏同様、まったく一人だけのアカペラからスタートし、後半カルデラッツォのピアノが絡んできます。
 これがなんと凄いの何のって、とにかくびっくり、大変素晴らしかったのです。途中2オクターブのコードアルペジオを延々とインコードで吹いたあたりでは思わず鳥肌の立つ思いでした。サブトーンからフラジオ、オルタネート・フィンガリング、重音奏法とあらゆるテクニックを駆使して、吹きまくっていました。
このようなスタンダード・バラードばかりを集めたCDが出ないかな―、と思ってしまいました。

・やっぱりカッコいい
 ふと気がつくと、11時。アンコールを含めると計6曲、約80分のステージでした。
やはり、生で聴くとCDとはインパクトが全然違います。私達プロでもこのように刺激を求めていかないと良くも悪くもマンネリになってしまいます。
「現代のジャズ」を感じさせられた、素晴らしい一夜でした。


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