ジョシュア・レッドマンin大阪ブルー・ノート

ジョシュア・レッドマン(T.Sax、S,Sax)
アーロン・ゴールドバーグ(Piano)
リューベン・ロジャース(Bass)
グレゴリー・ハッチンソン(Drums)

99年1月14日 1st Set


 もうすぐ30歳になるという今一番注目の若手サックスプレイヤー、ジョシュア・レッドマンを聴きに大阪ブルーノートへ行ってまいりました。

timeless tales アメリカの『ダウンビート』誌の読者人気投票でも、ウェイン・ショーターやマイケル・ブレッカーらを押さえてランクインしたという超人気者の出演とあってこの日のブルーノート大阪は超満員でした。
 私も彼を生で聴くのは初めてでしたので、期待して出かけました。さてそのライブの印象は、やはり素晴らしい演奏でした。CDで聴くよりもさらに自由奔放で淀みないフレーズ、良くコントロールされた楽器のテクニック、どれを取っても満足のいく内容で、その人気を裏付けるものでした。

・音色
 去年、テナーのマウスピースをメタルからラバー製の物に変えた、というインタビューが「Jazz Life」に掲載されていましたが、今回もそのセッティングのままのようでした。ちょっと響きが薄いかな、というのが第一印象でしたが、楽器自体は良く鳴っていて、なによりも楽そうに吹いているということが良く分かりました。マウスピースを変えたという理由もその辺にあるのではないでしょうか。
 ラバー特有の柔らかな音でサブトーンやパーカッシブトーン、フラジオ(なんとテナーではノーマル音域の2オクターブ上のG(ソ)位までを使っていました)など多彩な音色を使い分け、実に表情豊かな音色でした。
 また、彼はセッティングにも非常に神経質でステージ上でたびたびチューニングを補正したり、リードを取り替えたりしていました。

・ステージ
 最新アルバム「Timeless Tales」(上の写真参照)からのナンバーがほとんどでした。これからブルーノート東京などでお聴きになる方はぜひ予習されておくことをお勧めします。ちなみに私は終演後に思わず買ってしまいました。ガーシュインの「サマータイム」にはじまって、スティービー・ワンダーの「愛の国」、ジョニ・ミッチェルの「私の王様」そして新曲のオリジナルをはさんでジェローム・カーンの「イェスタデイズ」という5曲(だったと思います)が演奏されました。アンコールは誰の曲か良く分かりませんでしたが、テーマが4/4+6/4拍子のドリアン・モードの曲でした。

 とにかく、良く唄うフレーズを沢山持っている人です。フレーズ自体に全然無理がなくスムーズで、盛り上げ方も心得ています。聞き手をぐんぐん自分の方へ惹きつけることの出来る才能のあるプレイヤーだと思いました。
基本的にはインコードでプレイするのですが、時折見せる50年代後期のコルトレーンのシーツ・オブ・サウンド的なアプローチが妙に新鮮に感じました。
 やはり生のライブが彼の本領を発揮するにふさわしいのでしょう。CDでは味わうことの出来ないインパクトを痛切に感じました。
 バックのメンバーもレコーディング・メンバーとは違いますが、素晴らしい演奏をしていました。全体的に印象的だったのは、どの曲もちゃんとバンドサウンドとしてきちんとアレンジされていて、いわゆるメモリー形式で「せ〜の」で演奏するコンボスタイルではなく、楽譜上で構成も出来あがっている物であったということでした。この辺にジョシュア・レッドマンの音楽に対するまじめな取り組み方を感じました。バンドとしてのトータルサウンドを彼はだいぶ考えているのではないでしょうか?

 楽器のテクニックも素晴らしかったです。特に5曲目の「イェスタデイズ」に入る前に彼一人で吹いたイントロ部分ではびっくりしてしまいました。言葉では説明しにくいのですが、スラップ・タンギングでチョッパーベース風のラインを吹きながらフラジオやパーカッシブ・トーンを混ぜていくのですが、これがなんとも絶妙でなかなか真似の出来る物ではありません。すごいテクニシャンです。

 テナーとソプラノを持ち替えての計6曲でしたが、ステージ上にはアルトもセッティングされていました。残念ながら私の見たステージでは吹くことはありませんでしたが、ぜひ聴いてみたかったです。もし、これを読んだ方でアルトも聴いたよという方は、感想などゲストブックに書いておいて頂けるとうれしいです。

・今後
 彼は、まさしくメインストリーム・ジャズの主導者となっていくのではないでしょうか?スティービー・ワンダーやジョニ・ミッチェル、ビートルズからプリンスの曲などを取り上げている最新作を聴くと、これからのスタンダード・ナンバーとは?ということを考えさせられます。時を越えた物語、良いメロディーや曲の価値観をジャズ・シーンも考え直す時期に来ているのではないでしょうか?


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