MOTOさんの
きまぐれTokyoライブレポートVol.5

 MOTOさんからライブレポート第5弾を送って頂きました。MOTOさん、いつもありがとうございます。今回はゲストブックにも登場してくれている私の古い友人CHAKAのライブも含まれています。
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 『ジャズは現場で起きてるんだ!』をモットーに(いつから?前回から!)大都会東京のあちこちで、夜な夜な繰り広げられている熱きジャズライブのごくごく一部を極私的見解でお伝えしております。お暇な方はご覧あれ。

 さて今回は実験的な電脳ジャズユニット『東京ザヴィヌルバッハ』と、CHAKAをゲストヴォーカルに迎えて話題の『B.B.GROOVE』だ!う〜ん、なんだかすごい組み合わせだな(笑)とにかくいってみよ〜!

※いうまでもなく文中敬称略


◯ 東京ザヴィヌルバッハ 6/14 新宿ピットイン
坪口昌恭(key.comp) 菊地成孔(ts.ss.CD-J) 五十嵐一生(tp) 

怪しいなぁ〜、もう名前からして怪しいなぁ〜。サックスの菊池は自身のトリオや南博(p)のグループなど多方面で活躍中。解散したティポグラフィカでは主にタイトル作者、その他作詞作曲アレンジ多数。昔新宿シアターアプルでモダンダンスとのコラボレーションを見て以来だ。トランペットの五十嵐はマイルス・デイビスの影響を濃厚に感じさせる現代的なトランペッター。菊池によれば『東京の宇宙人』こと坪口はデータなし。菊地についてくわしくはこちらへ。

http://www.bekkoame.ne.jp/ro/gg8715/Pages/naru.html

 上記HPの『月刊菊地成孔』を読んでいただけたら細かい話をする必要がないので、このレポート、サクサクと進めましょう。ステージには数台のキーボードやCD-Jのマシン、各種エフェクターやミキサー?そしてコンピューターがセッティングされている。メンバーが登場し、まず坪口が説明する。『さまざまなものが表現されてしまい、いまはそれらを組み合わせるしかない・・・』といった内容。同感。スピーカーから歪んだ電子音のパルスが流れ出し『演奏』が始まる。坪口が『四人めのメンバー』と紹介したコンピューターが激しいビートを断続的に大音量で再生する。菊池がCDを音源として音・言葉・フレーズの断片を痙攣的に発射し、そこに坪口の弾くキーボードが重なる。そして五十嵐の深いリバーブとディレイのかかった、エレクトリック・トランペットが絶叫のようなフレーズを繰り返す。・・・こ、この音は!そう、ステージを見るとマイルス・デイビスの姿が!・・・そんなわけないが、70年代マイルスを現代的に蘇生させた、といえるかな?マシンを操作する姿が見えるためか、テクノロジーを使いながらも手づくり感というか(笑)音が身近に感じられる。

 このユニットの音楽的な構造は、むしろ懐かしささえ感ずるくらいだが、すごかったのはトランペットの五十嵐の『音』だ。マイルスが生涯吹きつづけたマーチン・コミッティ。同じトランペットを五十嵐は吹く。マーチン独特の絹を裂くようなハイノートが新宿ピットインに激しく何度も響き渡る。凄絶な美しさだ。五十嵐のプレイには圧倒された。・・・皮肉なことだが、一人のプレイヤーの音がユニットの意図を超えてしまったように思えた。

 ここで、最近の五十嵐のライブを何度か見ているHiro Dayamaさんにメールで情報提供をお願いした。

「一度、ほんとうに短い時間ですが、お話をする機会があり、プロのミュージシャンに対して失礼かなと思いながら、『失礼かもしれませんが、マイルスに通じるものがありますね。』と私が言うと、『全然失礼じゃないよ。逃れられないものがあるね。』と一生さんはおっしゃっていました。雑誌の記事によると、小学生の時に聴いた「Miles In Tokyo」が原点で、その演奏に憧れて20数年トランペットを吹き続けてきたとありました。マイルスのマイクの使い方まで、勉強したようです。(五十嵐さんはLIVE HOUSE備え付けのマイクは使いません。自分で持ってきます)…思想なんて、ますます私にはわかりませんが、マイルスがよく言っていた『HIP』をテーマとしているのでは?と勝手に私は思っています。」

 ありがとうございました。ちなみにHiro DayamaさんのHPはこちら「JAZZY NIGHT CAFE」でございます。

http://listen.to/milesd

 こういったアバンギャルド(といえるのか?もはや普通だ)なライブを観念的な言葉で解説してもあまり意味が無い。それに自分といえば、結果的に五十嵐のトランペットに心奪われてしまい、このライブの意味なんて考えられない・・・しかし・・・コラージュされた混乱した音群にサックスやラッパが乗り、疾走する時の『カッコよさ』に惹かれること・・・あるいはこれもまた計算の内、なのだろうか?

 なぁ〜にがサクサクか、えらいかかったな。良い演奏を聞いた時には充実感と解放感、カタルシスがありそれはライブの醍醐味のひとつではあるが、すべてではない、ということか。さぁ、それではお待ちかね、B.B.GROOVE WITH CHAKAの登場です!


◯ B.B.GROOVE 6/16 六本木ピットイン
納浩一(b) 小池修(bs.ss) 布川俊樹(g) 矢堀孝一(g) 岩瀬立飛(ds) 
岡部洋一(per.se) CHAKA(vo)

 六本木ピットインの店内は立ち見が並ぶ超満員だ。まずバンドのリーダー納(おさむ)が登場し、短いソロパフォーマンス。納はウッドベース1本(当たり前だ)とエレキベースが数本。布川・矢堀師弟コンビはそれぞれソリッドとセミアコを用意している模様。岩瀬立飛は大きなシンバルを何枚も立ててロック用のドラムセッティングだ。小池のバリトンにはハードラバーのマウスピース。ソプラノもある。岡部のパーカッション類はよく見えなかった。曲目はCHAKA自身が書いてくれたので、有り難く引用させていただく。

1st set
*ドラフトミィーティング/納浩一オリジナル (ドラフト会議のこと・納さんて野球も好きだったの?)
*ベンツ、おばさん、田園調布/納浩一オリジナル (自分に縁のないものを集めたとのこと・最近ベンツは除外)
*Rain Song/Led Zeppelin (小池のソプラノソロが美しい・皆しーんとして聴き入っていた) 

 どうもベースとバリトンの音がよく聞こえない。音の分離が悪い。スピーカーに近い席に座ったからだろうか?・・・ええと、B.B.GROOVEについて説明すると(知っている人ここ早送り)実はメンバー全員がそれぞれリーダーとしてライブ活動をし、アルバムを出しているという、とんでもないスーパーバンドなのだ。よく集めたものだ。ファンク・ロックバンドとしてはツインギターにバリトンという編成も変わっていて、リーダー納のこのバンドにかける意気込みが感じられる。

 ・・・客席が何となく落ち着かない。 皆、待っているのだ。 そして、いよいよ、JB風のリズムに乗り納がコールする!『ヴォーカル、CHAKA!』

 ついにCHAKAの登場だ!CHAKAは大歓声と拍手に応えながら片手を上げ、斜め上方を指差しながらステージへ。おぉ、これは雲龍型の土俵入り、はたまたジャイアンツの松井選手もやったことがない『予告ホームラン』か?なんのこっちゃ!納のカウントで演奏が始まる。CHAKAは最初からアクセル全開だ。激しいアクションと共にいままで聴いたことのないパワフルなヴォーカルが炸裂する。パワフルでソウルフルでワイルドでダイナミックでセクシーだ。あ、しまった全部言っちまった。ステージからエナジーというか波動が押し寄せてくる。客席の誰もが思っただろう『これがCHAKAなのか?』

*Hair (凄かった)
*Hots On For Nowhere/ Led Zeppelin(凄かった)

 休憩に入る。この時点ですでにノックアウトされていて、なぁ〜んにも思い出せない。え〜二曲で終わり?もっと聞きた〜い!と言いつつフラフラとカウンターまで行きビールのおかわりを注文。・・・さて 2nd setだ。メンバーがステージに戻ってくる。布川師匠が余裕でビールを飲んでいる。本日の師匠は絶好調?こんなもんじゃない?とにかくソロが素晴らしく盛り上がる盛り上がる。バッキングしている時は目が虚ろでこの人ヤバイんじゃないかと思っていたが、ソロになると音に集中して完全に没入してしまう。なぜか座頭市を連想してしまった。恐れ入りました。

2nd set
*Base Bse/納浩一オリジナル(哀号、我忘却的印象)
*黄昏のリヨン/納浩一オリジナル(日本代表がワールドカップで敗退したかの地をしのびつつ…とのこと)

 二曲演奏された後、再びCHAKA登場! まってました!
*KISS/ Prince(ギターのあのカッティング部分は矢堀担当、そんなにキメキメではなかったかな?)
*Walk This Way/ Aerosmith(この曲を納はウッドベースで弾き倒す・非常に盛り上がった)
*Round Midnight(raggae風)(アレンジが斬新・途中一瞬タイムがヤバクなる場面も←気のせい?ゴメン)
*Be Bop/ Dizzy Gillespie(納浩一version)(CHAKAのRAPはマシンガン!小池の超絶バリトンソロはこのあたりだっけ)

 最後のBe Bopをはじめ、2nd setもメチャ良かった。バンドとCHAKAが一体となって攻めてきた感じだ。Be Bopでは間違えて岩瀬立飛のドラムソロになったらしいけど、全然気が付かなかった。立飛のソロは文字通り渾身のプレイで、途中何度か死んではすぐ復活し驚異の高速バスドラ連打(別名じだんだキック・ウソだけど)でフィニッシュ!フラフラになってました。ここで本編は終了。当然拍手と歓声は止まず、アンコールに突入。

encore
*Lazy/ Deep Purple(演奏が終わってほしくなかったなぁ)

 と、いうわけで大満足のライブでした。お世辞でなく個人的には今年見た(少ないけど)ライブのBEST 3に入るでしょう。叙情的に歌い上げるCHAKAしか知らない客(自分もだけど)の中にはあまりの迫力に固まってしまった人もいたかもしれないが(笑)このチャレンジは大成功といえるのではないでしょうか?またバンド自体も発展途上で(今回がまだやっと二回目のライブ)今後ステージをこなしてきたらどれだけ凄いことになるか想像もつかない。そして当然フロントにはCHAKAがいて、もっと解放されてシャウトしまっくているでしょう。だいたいリーダーの納に関西弁でつっこみいれられるヴォーカリストはやっぱCHAKAしかいないでしょう?(爆)。では、今回もまた

『ライブ最高!』


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