MOTOさんの
きまぐれTokyoライブレポートVol.6

 MOTOさんからライブレポート第6弾を送って頂きました。MOTOさん、いつもありがとうございます。
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 『ビールは生が一番!ジャズはライブが一番!』をモットーにジャズライブを極私的見解でお伝えしております。お暇な方はご覧あれ。
 さて今回はイタリアのフリージャズミュージシャン『カルロ・アクティス・ダート』と、4人のサックス奏者が暴れまくる、早坂紗知ひきいる『ブラック・アウト』だ!

※文中敬称略


◯ カルロ・アクティス・ダート DUO 6/24 新宿ピットイン
カルロ・アクティス・ダート(bs.ts.bcl) 佐藤允彦(p)
 

 フリージャズが好きな人しか聴きに来ないライブである。客席を見渡せば20名程の入り。多い方だ(笑)。

 カルロはバリトンから吹き始める。佐藤允彦はピアノ越しにカルロを注意深く見ながら音を探って行く。佐藤の音楽的な懐の深さはDUOの相手としては最高だろう。鍵盤上の両手はカルロのフレーズに的確にしなやかに反応し、寄り添ったり、ずらしたり、つっこんだり、支えたりする。

 バリトンのプレイにはそれほど感心しなかったが、バスクラに持ち替えてからどんどん良くなってきた。特にテナーでの循環呼吸奏法を使ったプレイが素晴らしかった。叙情性を感じさせるフレーズが途切れることなく、うねりながら広がって行く。こういったフリーな演奏は初めて聴いた。視野が広がった感じだ。

 カルロの演奏表現は、単に抽象的でテクニカルなフリーミュージックではなく、祝祭音楽的な要素が感じられ、ヨーロッパの大道芸人達に通じる雰囲気がある。大胆なプリント柄で薄地の上下の服装も『舞台衣装』であることがわかる。一種の儀式に立ち会っている気分でもあるが、この夜のカルロはあまり乗らないらしく、ある到達点を感じさせないまま早々に終わってしまった。まだ10時だぞ。さすがラテン系はマイペースだ(笑)。佐藤允彦も『いいかげんだなぁ』と苦笑していた。

 個人的にはテナーでのプレイだけでも満足だ。得意技らしいバスクラ解体は次回に期待しよう。


◯ NEW BLACK OUT 7/22 新大久保サムディ
早坂紗知(as.ss) 林栄一(bs) 津上研太(as.ss) 川嶋哲郎(ts)
永田利樹(b) つの犬(ds)

 BLACK OUTは以前から見たかったのだが、ようやく実現した。テナーは菊地成孔から竹内直と変わり、そして川嶋が今回から新加入ということで、NEW BLACK OUTとしてのライブだ。基本的にフリーですべてを怒涛のごとくに吹き倒す循環帝王・竹内と、基本的にコルトレーンを原点に端正でスタイリッシュな川嶋のスタイルの距離を考えたら確かにNEWがつくくらいの変化だろう。竹内在籍時のライブを見ておきたかった。

 一曲目、『BLACK OUT』からスタート。サックス4本はさすがにパワーがある。早坂紗知は女性だが身体全体でエネルギッシュに吹く。林栄一のバリトンは初めてだ。津上研太は昨年渋谷オーケストラで見たが、その時よりパワーアップしている。ドラムにベースだけの、コード楽器のないシンプルな構造の上で(しかもドラムは今回だけという)4本のサックス群は、まとまったり離れたり、押したり引いたり、飛んだり跳ねたり、つっこんだりつっこまれたり、持ち上げたり落としたりと自由奔放やりたい放題。しかしすべてが譜面にそって正確に演奏されていて、何の合図もなく全員がいっせいにテーマに戻ってくるのは当たり前で、ソロの部分もある程度計算されているようだ。それもメンバーそれぞれが傑出したプレイヤーだから可能なのだが。新加入の川嶋が演奏中も譜面を真剣に追っているのが印象的だった。

 本当に高速のアクロバット編隊飛行のようなスリリングな演奏で『プロはやっぱスゴイ!』と改めて思った次第。バンド名の由来が判る。かといってガチガチの緊張感ばかりでなく、選曲もセロニアス・モンクにグラナドス(!)からトム・ウエイツ、そしてオリジナルとバラエティ豊か。ファンキーな『バードランド』や、アンコールではスティービー・ワンダーの曲などがこの夜演奏され、とても楽しいライブだった。

 川嶋といえば、林のブチ切れたバリトンソロを(場面によってはバリトンがフラジオで一番高い音を出していたりする)横から見ながら『あちゃ〜』てな複雑な表情をしている。『おれ、すごいとこはいっちゃったなぁ』と勝手にセリフつけてしまった(笑)。このバンドではきれいにジャズの語法で吹くというだけではなく、音それ自身のスピードやパワーなど別の高いレベルでの鍛練が出来ていないと勝負できないという感じ。ソロになって、もがきながらフレーズが分解し始め、だんだんと壊れていく川嶋をみつめる他のメンバーの暖かな眼差しが忘れられない(爆)。これからの NEW BLACK OUTは、本当に楽しみである。


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