バリトンサミット in ロイヤルホース

  東京オフにもご参加頂いた、守屋純子(Pf)さん率いるバリトン・サックス3本を中心にしたアンサンブル・ユニット「バリトン・サミット」をロイヤルホースで聴く事が出来ました。今回は久しぶりに私自身のレポートでお届けいたします。尚、曲名などに関しては守屋さんご本人にメールでご協力を頂きました。ありがとうございました。
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5/25(木) 大阪梅田ロイヤルホース

宮本大路(Bs,Ss)小池修(Bs,As)黒葛野敦司(Bs,Ts)
守屋純子(pf)納浩一(b)小山太郎(ds)


 ちょうど1年ほど前のことでしょうか?このユニットをはじめて聴いたのはNHK-FMの「セッション505」という番組でした。その後同じ番組のハイビジョン版を、友人にエアチェックしてもらったビデオが大変面白く何度も見たものです。今、私自身も3人のサックス・ユニットを組もうとしていますが、この放送を見た事が刺激となり、きっかけになったとも言えると思います。ちなみに番組収録時のドラムは岩瀬立飛さんでした。

 今回のバリトンサミットは守屋さんの西日本ツアーの2日目にあたり(前日は名古屋、翌日神戸でバリトンサミット、そしてビッグバンドで27日岡山の高梁市、28日広島の神辺町)、東京から楽器を積み込んだ車2台で移動しているという事でしたが、疲れも感じさせない迫力ある演奏でした。

演奏曲目

曲順 曲目 編成 曲目 編成
  1st Set   2nd Set  
1 ロッカー ATB チルドレン・オブ・ザ・ナイト ATB
2 グリーン・チムニーズ BBB ラメント・フォー・ライナス STB
3 君住む街角 BBB ドロップ・ミー・オフ・アット・ハーレム ATB
4 オー・ミスター・ソーター?
イエス・ミスター・フィネガン?
SAB イーストサイド・ウェストサイド ATB
5 ナイト・ライツ ATB バラードメドレー
(ソフィスティケイティッド・レディー〜マイワン・
アンド・オンリー・ラブ〜ボディ&ソウル)
BBB
6 アポイントメント・イン・ガーナ BBB アップル・コア BBB

 上記のような演奏曲目でした。曲目によって編成が違いますので、誰がどの楽器を受け持ったのか?は皆さんが考えてみてください。(当然S=ソプラノ、A=アルト、T=テナー、B=バリトンです)BBBは3人ともがバリトンを吹いた、ということですね。色々な楽器の組み合わせにより多彩なサウンドが効果的に使われていました。各人が楽器をとっかえひっかえ持ち替える姿は見る目も楽しく、全く飽きを感じませんでした。しかし、なんと言っても3人がバリトンを持ってアンサンブル、ソロの掛け合いをする、というステージは圧巻です。
 ステージ途中の守屋さんのMCによると、元々故ジェリー・マリガンの追悼企画としてスタートしたユニットだそうで、マリガンの曲とエリントンナンバーを中心にスタンダードな曲で構成されていました。2ndステージの「ラメント・フォー・ライナス」はブラッド・メルドーの曲、「イーストサイド・ウェストサイド」は守屋さんのオリジナルだそうです。バラードメドレーでは各人が一曲づつ担当してしっとりとした演奏を聞かせてくれましたが、マナーの悪い団体客の話し声が響き渡りちょっと残念!アンコールはありませんでした。

 さて、サックス吹きにとってやっぱり気になるのは、楽器とマウスピースなどのセッティングですが、小池さんはインタビュー・コーナーにもあるように、アルトはアメセル7にランバーソン7DD、バリトンはアメセル6にヤナギサワ9番、リコーロイヤルの4番。
黒葛野(つづらの)さんはテナーはアメセル6にオットーリンク。バリトンはフラセルのスーパーアクションに小池さんと同じヤナギサワ9番にリコーの3半。
大路さんは、ソプラノは昔から使ってらっしゃるヤマハYSS-62のブラックラッカーに、なんとスプレンダー(韓国製)のマウスピースとのこと。バリトンは1941年製のコーン12M、オットーリンクのオールドエボの8番にリコーの5番。ということでした。

 小池さんや黒葛野さんの使っているヤナギサワのマウスピースは現在一般に市販されている物ではなく、金文字でヤナギサワの名が彫られていて一本のエボナイトの丸棒から削りだしているカスタムメイドの手工品の物です。このマウスピースは近藤和彦さんや佐藤達哉さんもバリトンで愛用しているようです。多大な手間がかかるため今はほとんど作られていません。

 今回ビックリしたのは宮本大路さんのコーン12Mの音です。ものすごく重厚で太くて音圧がありBbバリトンとは思えない、正にマリガンを彷彿とさせられる魅力のある音色でした。アドリブのフレージングも素晴らしく理路整然としてカッコ良い。休憩中にお話しに行って、12Mの音の印象などを大路さんに述べると、並んで座ってらした小池さんが「そうでしょ!僕も欲しいなぁ、と思ってるんです」と仰られたのが印象的でした。大路さんは最近アルトも29年製のデッドストック状態だったというほとんど未使用の極上のコーンを手に入れられたそうで、目下馴染むために練習中とのことで、益々コーンな人は増えているようです。「前のシリーズIIのホワイト・ラッカーはどうしたんですか?」と尋ねると「あぁ、持ってますよ。スタジオとかではやっぱりAまでないと仕事になりませんからね。」とのお答えが返ってきました。

 小池さんはテナー同様クールで理知的なフレージングで明るく枯れてヌケた音、やっぱり何の楽器を吹いてもこの人は本当に上手い!!黒葛野さんは私は古いお付き合いなのでまさしく彼の音とフレーズなのですが、なんと表現したらいいのでしょう?オーソドックスな音ですが攻める気満々の、といった感じでしょうか?時々混じる彼お得意のクロマチカルな6連フレーズは「お〜っ!相変わらずやなぁ!」などとにんまりしてしまいましたが、バリトンの特性を生かした幅広い音域を駆使して見事なソロを展開していました。
 バリトン3本を一度に聴く機会はそうそうありませんので、同じ楽器とは思えないような各人の音色の違い、アドリブに対するアプローチの仕方など、大変勉強になりました。

 リズム陣も大変素晴らしくスピード感あふれる演奏でした。守屋さんの堅実なバッキングと、あふれ出るようなピアノソロ。また時々ピアノを弾く手を休めて目を閉じる姿は、アレンジャーとして演奏に耳をかたむけているかのようにも見えました。
納浩一さんは、実に久しぶりに聴きましたが、本当に凄い!まさに自由自在にウッドベースを操っているという感じです。隣に座っていた某大学ビッグバンドでバリトンを吹いているというS君は、「納さんってJazzLifeとかの写真で見てるともっと大きな人かと思ってました」と言ってましたが、本当にあの小さな体でベースを弾いている姿は感動的ですらあります。
小山太郎さんはNY在住、今回はご自分のCDの発売記念ツアーを井上陽介(b)さんと回られるのに先がけて守屋さんのツアーに参加。ドラムソロも炸裂!良いグルーブ感でした。

 このバリトン・サミット、東京では新大久保サムディ、六本木サテンドール、銀座スィングなどで定期的に演奏されているようです。是非一度足を運んで実際に聴いてみて下さい。


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