第4回 小池 修さん(Sax)
第四回目は、自己グループやBB・Groove、テナーサミット、バリトンサミットなど幅広いセッションで活躍されている小池修さんの登場です。15歳でプロとしてステージに立ってから現在に至るまでのエピソードや、小池さんの真摯な音楽観など大変参考になるかと思います。例によってキャノンボール・あ・誰?さんのインタビューによる長文ですので、ファイルに保存してじっくりお読み下さい。
使用楽器
Ss:仏セルマー/シリーズIII
mouthpiece: バリ66
reed: ?As:アメリカンセルマー/マーク7
mouthpiece: ランバーソン 7DD
reed: ?Ts: アメリカンセルマー/マーク6/22万台
mouthpiece: デイブガーデラ(マイケルブレッカーモデル)
reed: ?Bs:アメリカンセルマー/マーク6
mouthpiece: ヤナギサワ9
reed: リコーロイヤル4影響を受けたplayer:
Stan Getz, John Coltrane, Bob Mintzer,Michael Brecker,
Cannonball Adderley,Warne Marsh, Art Pepper, Phil Woods,etc...お薦めアルバム:
Stan Getz/Gilberto
Michael Brecker/すべて(Michael Brecker名義で出ているもの)
John Coltrane Quartet/ Ballad
Yellow Jackets (Bob Mintzer)/ Green House
今回は不知火型の最高峰(「あ・誰?」が勝手に認定):小池修さんの登場です。以前からインタビューを依頼していたところ、ある日「今からいいよ」って電話を頂き、突然だったので少し動揺しています。場所はとあるレストラン。小池さんは仕事帰りで、食べながらモグモグ・・
小池修さん(以降、修):(モグモグ)聞えまふか?
あ・誰?(以降、誰):はい、聞えます。でも・・(マイクの向き等を調節して)
修:はい。これでもうばっちり入るの?
誰:ばっちり。突然だったので、動揺していますが。サックスとの出会いと吹き始めたきっかけをまずは教えて下さい。
修:はい。サックスとの出会いは(モグモグ)確か小学校2年か3年の時に(モグモグ)親父に連れてってもらったサム・テイラーを聴いたのが初めてです。(モグモグ)それで、サックスがかっこいいなと思いました(小学生みたいなしゃべり方)。で、次は何だっけ?
誰:吹くきっかけ。
修:吹くきっかけは、う〜〜む、親父が楽器を色々持ってて・・・
誰:色々ってどんな?
修:トロンボーンとか、トランペットとか。(お父さんが)ちょっと昔バンドやってから。僕もドラムを最初に習ってやってたりしてたんだけど、サム・テイラーを聴いてサックスがかっこよくなって、サックスを吹きたいなと思うようになったの。で、ボーイスカウトに入って、音楽隊だったのね、で、そこで吹きたくなって・・・
ウェイター:失礼致します。ご注文の品の方はお揃いですか?
修:は〜〜い、以上です。今のはウェイターさんです(笑)。でボーイスカウト入って。アルトサックスを最初に吹いたの、それが10歳の時。
誰:じゃぁ、もうお父さんとかもすごい応援してくれた訳ですね?
修:そう。
誰:その頃からプロになろうと思ってたの?
修:もう大体頭の中にあった。
誰:前に聞いたけど、ものすごい早い時期から、いわゆるお仕事って形で演奏してたわけじゃないですか?それも自分の意思で?
修:そう。というか、それには伏線があってね。ま、学校に行けなかったって言うのもあるんだけど。(苦笑)
誰:学校に行けなかったってのはどういうこと?
修:・・・(モグモグ)ワルくて。
誰:・・・ワルだったの?(笑)
修:うん・・・(モグモグ)
誰:そんなの録音しちゃっていいの?
修:人に聞かせないでしょ?
誰:いや、聞かせないよ。聞かせないけど伏線の説明をする時に必要な場合は。
修:あぁ、そうか。
誰:え、でもさ。ワルだったって言いながらもサックスは吹いてたんでしょ?
修:サックスは吹いてたんだけど、中学に入ってからの3年間はほとんど楽器触ってないの。とにかく、どうしようもなくて、義務教育の日数も足りなくて、どうしましょう?ってことになって。高校にも行けないと。
誰:今、あばかれる小池修の過去!
修:うん、まぁ簡単に言えばね。で、いっぱい傷害事件とか起こしたりして。もう、ちゃんとした道はなかったの。でも、時々は吹いてたんだけどね。習いにも行ってたから。相当ワルかったんだけど、音楽だけは続けてたの。で、いざ高校入試しましょうってことになって、体でかいし、陸上とかで記録持ってたのね、僕は。学校行かないんだけど運動だけはしてたの。野球部にも入ってたし。で、その時、広島の有名な高校があって、バレーか野球やるんだったら入れてやるよって話しだったんだけど、どうしても音楽がやりたいと。で、音楽の世界に入ったの。で、そっからすぐプロ。ボーヤ兼プロ。
誰:へえ。なんかすごい、もう。私は今このインタビュアーっていう役割を、勝手に面白半分で、サックスという楽器が好きだし、引き受けましたけど、大変なものを引き受けたな〜って、青柳君の時からもう既に思っています。
誰:そうですね。何を聞けばいいかな?えっと、そうだな?(「あ・誰?」全然いつものペースじゃない感じ)あの、その、何を訊いていいかわかんなくなっちゃった。
修:な〜〜んでも。食べちゃうよ、これ。
誰:うん、食べて。えっとね、色んな人に話しを聞くと、日本の色んな同業者さんです。
修:プレーヤーね。
誰:そう。セミプロの人も、プロの人も。このインタビューを引き受けてから、私が会う人会う人に「日本ですごいと思う人は(sax player)?」って訊くと、必ず小池さんと(佐藤)達哉さんの名前があがるんです。
修:あらららら・・あ?(謙遜しながらモグモグ)
誰:そういうことと、それからユダヤ系のスタイルが得意だと言われていることについてどう思われますか?
修:(モグモグ)いやぁ・・・嬉しい限りです。
修&誰:(笑)あははは・・・
修:嬉しい限りですけど、本人としてはあんまりそんなこと意識したことないし、僕はまだライブのシーンでは新参者だから。
誰:そうなんですか?スタジオミュージシャンっていう風に書かれてることが多いよね。
修:うん。やめちゃったけどね、もう。
誰:全然やめちゃったの?
修:ううん、全然ではない。またちょっとずつ復活しようと思ってる。
誰:ライブのシーンでは新参者っておっしゃってますけど、何人ぐらい聴いたかな?みんなそれぞれプロですごい人ばっかりなのに、小池さんのことを「一番だ」って言う人は多いですよ。「あの人は一番すごい」って。
修:(苦笑)何が一番すごいのかなぁ?わかんないよ。
誰:一番うまくて・・・って・・・あたしはぁ、この間小池修バンド3曲しか聞けなかったんだけど。サックスに勝つというのはこういうことだな、と思った。サックスという楽器を征服してたんです。
修:ふ〜〜む。
誰:小池さんのやり方でね。色んなやり方があると思いますけど。お友達になるという様なつきあいをしているって感じる人もいるし、でも小池さんはサックスに勝ってるな〜と思った。その3曲は。で、それがきっとすごいんだと思う。
修:う〜む。(困っている)
誰:テナーサミットのレポートにも書いたんだけど、小池さんはね、その曲でその楽器でどこへ、どういう風に行きたいか、そういうことを自分のイメージとして明確に知ってて吹いてる感じがすごいする。勝つプレーヤーですね。
修:ありがとうございます。(照)
誰:それがきっと・・・あ、それから特徴として、例えば何人もいる中でみんなでソロまわししてて、次の人から自分のターンにまわって来るじゃないですか?サックスの人が一人しかいない時でも、要するに自分が吹く番というのがあるでしょ?その時に必ず、吹き始めでね、絶対はずさないですね。「つかみはOK!」
修:はははは(笑)
誰:それが小池さんの特徴。だんだんと煮込んでいくタイプの人もいるんですよ。最初っからちょっとずつ「こんなんかなぁ〜?」つって、気がついたらわ〜〜すごいっていう人もいるんです。でも小池さんは「つかみはOK!」すごい立ち上がりが早いし。で、達哉さんにも言ったんだけど、色んな音があって、一つの音からもう一つの音に行くのに、指使いが人間の指や楽器の構造上難しいものも、簡単なものもあると思うんですけど、そのどれもが均等ですね。だからそういう意味も込めて楽器を征服してる人だなって思ったの。で、一つの音にステイしてる時間がめちゃめちゃに長い。こないだのテナーサミットの4人の中では一番そうでしたね。それでね、勝ってる人だなと思ったの。
修:あぁ、ほんと?
誰:ヴォーカルの人でも色々いるんですよ。うにうに〜って行く人やスパーン!って行く人や。でも小池さんは、鳴ってる間の、一つの音に存在してる間がすごく長いですね。もちろんそうじゃない吹き方もあるだろうけど。それで、勝ってる人だなって思ったの。
修:ありがとうございます(笑)。でもね、あの、みんなそういう風に言ってくれる人が多いか少ないかってのは、ま、別として、テナーサミットのことに関してにして言えば。例えばその・・・ま、達っちゃん(佐藤達哉さん)はもう達っちゃんで形が出来てるから、僕もすごく尊敬してるし。つきあいも20年ぐらいなるから。で、新しい子だと、安保君とか川嶋君とかでしょ?もんのすごい素晴しいと思う。ほんっとに。う〜ん。だからその、なんて言うかな?みんな嘘つかないでやってるよ、ちゃんと。昔はそういう人少なかったの。嘘はつかないけども、周りの雰囲気に流されて、気がついたら4人サックス奏者がいたら、みんな同じスタイルで終わってしまったっていう場合が多いのね。テナーサミットの場合はどこまで行きついても、必ず自分を最後まで表現して終わるっていう。お祭りにならないの、どうやっても。セッションとか同じ楽器がたくさんあるバンドで、激しい曲やっても静かな曲やっても、お祭りにならないってことは、ものすごいいいことなの。
誰:お祭りっていうのは、そこに、なんていうか責任感がなくなっちゃうってこと?
修:そうそうそう。だから例えば青柳(青柳誠さん)と僕はまぁちょっと昔からつきあいがあったでしょ?とにかく彼のピアノっていうのは、途中でお祭りになってたの、いつも。で、さんざん怒ったことがあったの。何故かっていうと、彼はうまいし、なんでせっかく途中まで物語が作れてるのに、周りの空気とかそういう存在に流されて、もちろんそりゃ音楽だからね、瞬間的にみんなとグループサウンズしてる訳だから、大切なことだけども、弾けることがちゃんと弾けて言葉として表現できる人間がね、言葉を放棄して赤ちゃんになっちゃったり、途中で急に。それだけは僕はあまり好きじゃないのね。
例えば歌い手さんで言えば、歌詞があって最後まで行かなきゃいけないのに、ただ怒鳴って終わってしまったりね。歌手っていうのは最後まで歌ってはじめて言葉でしょ。それが与えられてるのはソロの場で、その為にみんな練習してるんだと思うの。それがテナーサミットの場合はないの。通常テナーサックスが4人集まって、まぁ何の楽器でもそうだけど、バトルをやると、何回か回ってきて、最後の一回ずつ吹いたソロを聴くとね、みんな同じ様なことしかやってなかったりね。それは悪いとは言わないけど、そこにもやっぱりある程度主張がないとね。やってる意味がないと。
そういう意味でいうと、僕は残りの3人はすごく尊敬してる。安保君もそうだし、川嶋もそうだし。で、自分が吹く前に、安保が吹いたことを、安保の通りコピーして、川嶋君が盛り上げるんじゃなくて、安保の言葉を聞いて、自分の言葉としてまた反応してあげて、それが達ちゃん、僕って風に順番に回ってきて。全部言葉になってる。だから楽しい、あそこはね。誰:それはすごいありましたね。みなさんそれぞれ違うじゃないですか?で、それぞれがそれぞれのがスタイルを尊重してるし、自分のスタイルは築きあげてるし。ヴォーカルもね、偉そうなことは言えないんですけど、ライブって、最後「twist and shout」とかそういうの歌って、自分の出番の時みんな自分のことそれぞれやってるのに、ビートルズとか有名な曲をやって『わ〜〜〜』ってなっちゃって、でもそれが一番楽しそうだったりして。自分の演奏の時はそうじゃなくて、そのアンコールのその「twist and shout」で、そりゃ好きな音楽やってるから楽しいのはわかるけど、プロとしてやってるステージの最後にその曲をやって、それも無茶苦茶になって、なんとなく「yeah!」とかっていうの、すごく嫌いなんですね。
修:まぁ、時期的にね、今、僕がそういう考えを持ってるだけで、また変るかもしれないけど。少なくとも自分はまだ勉胸中だと思ってるし、自分がさっき書いた人たち(影響を受けたplayerの欄)現在生きて頑張ってる人たちに関して、どこが尊敬できるかっていうと、色んなバトルシーンがある訳よ。例えばマイケル・ブレッカーとアーニー・ワッツとビル・エヴァンスとスタンリー・タレンタインと集まっても。
誰:それ、見た、あたし。
修:見たでしょ?やるでしょ?でも、一流プレーヤーはどこまで言っても個人なの。だけど個人があるから優れたアンサンブルがあるわけ。バトルをやって一人が「あいうえお、あいうえお」ってやっても、次の人も「あいうえお、あいうえお」って吹かないの。最後の人まで来たら、また「あいうえお〜」ってことにならない訳よ。日本人はそうなの。バトルっていうと「あいうえお〜」ってやって、次の人が高い音域で「あいうえお〜」って。最後の人まで「あいうえお〜」って、時にふざけたやつが、3番目ぐらいで(低い音域で)「あいうえお」って、同じ表現を音域を変えて吹いたりね。それはなんて言うのかな?楽しいことと、何かちょっと錯覚してる。お祭りと楽しんでることと・・
誰:決してcreationじゃないってことですよね。
修:そうそうそう。だから、そうじゃない表現方法を見つけるべきだね、日本人はね。
誰:だから、テナーサミットはね、素晴しかったですよ。こないだ一生懸命、写真とりながら、レポートしてたから最後の方、何だかよくわかんなかったんですけどね。あの人、安保さんはね、すごいロマンチックだった。
修:うん!安保はいいよねぇ。
誰:それでシンメトリーだった。安定を感じる人で。川嶋さんはね、何かね「俺に惚れちゃいけねえよ、お嬢さん」(笑)って感じだった。
修:うんうんうん、そうそう。
誰:ちょっと前に青柳さんにインタビューした時に、ロスアンゼルスの(レコーディング)のこととか訊いたんだけど、そのことについて訊いていい?
修:うん。ロサンゼルスのレコーディングは、CD自体は来年の春に出るんですけども、ミニアルバムで6曲。オリジナルが2曲。残りの4曲はチャーリー・パーカー・ウィズ・ストリングスの曲を4曲選んでテナーサックスでやる。で、ロスアンゼルスのシンフォニックの人達に弦をやってもらって、リズム隊はまぁそれぞれ素晴しい人たちに参加してもらって。(*注:2000年4/21に「小池修with Strings Vol.1 April in Paris」としてリリースされました!)
誰:それは、どういうことでそういう運びになったの?
修:うん。そのプロデューサーっていうのが、とにかく今の日本の音楽シーンはね、あのぉ、まぁ、おじさんのたわごと半分と思って聞いて欲しいんだけども、やっぱりつまらないと。真の評価を得られてる音楽がないと。ただニーズに合って、売れてるものも確かにあるけども、それを評価していいかどうか?ということになると非常に迷ってしまうと。
プロデューサーとか生楽器を演奏してきた人はね。ただ、売れてるものに関しては否定は出来ない。ただそれは売れてるからいいんじゃなくて、他の音楽を知らないからじゃないか?と。他にもいい音楽があるんだと。この世の中にね。それを知らせる努力をしてないんじゃないか?と。その、出来る人たちが。で、色んな昔の、昔ががいいとは言わないけど、もっと歴史的に文化のあるものを伝えるっていう作業を、そろそろ僕たちの年代はした方がいいんじゃないかと。で、そん中には色んなジャンルがあって、ロックがあって、ボサノバがあって、ポップスがあって、ビートルズがあってブリティッシュロックがあって、映画音楽があって。そん中で、色々ある中で僕はジャズを担当したのね。
ジャズにも色々あって、まず聴いてもらうためには、要するにさっきの「つかみ」じゃないけども、聴いたことない人にも聴いてもらう方法としてね、例えば、なんていうのかな、ゴリゴリの、聴いて頭が痛いジャズも世の中には確かにあるわけ。それよりも「これもジャズだ」っていう様なのをね。それでストリングを選んだのは安易かもしれないけど。そのプロデューサーが僕を選んでくれたのは、僕が吹いたら小池修だっていう存在を認めてくれたのね。で、だからあえてパーカーのことをやった訳。『パーカーの二番煎じでやるのがもし嫌だったらやめていいよ』っていう相談までしたの。『だけど僕が小池を選んだのは、君だったらパーカーの曲をやっても小池修になってちゃんと現われるから、チャンスだからやってみなさい』って。で、僕は引き受けたの。誰:そうか(しみじみ)・・・素晴しいじゃないですか!
修:素晴しかったですよ、ロスは、もうほんとに。
誰:そこまでの話しとして既に素晴しいじゃないですか?だってそういうテーマでCDを作るっていうこと自体が素晴しい。
修:そうそう。そうね。それは僕じゃなくて、作り手が素晴しいなぁと思うけど。
誰:でも、数あるプレーヤーの中で、小池さんを選んだ訳だから。すごいじゃないですか?
修:それはもう、ありがたいですよね。
誰:何日ぐらいでやったんですか?
修:一日で6曲。
誰:すご〜〜い。
修:同録。多くても3テイク。中には1テイクのやつが二つぐらいある。
誰:素晴しいですね。
修:それもね、そのプロデューサーが考えたことで、要するに僕はスタジオミュージシャンだから、ブースに入って後でダビングしてソロをやりなおせばいいものが出来るのはわかってると。でも、それをやるんだったら、従来の小池修。じゃなくて『お前が今ライブシーンで頑張ってることを、本当に表現するなら、やっぱり緊張感を持つというリスクをもっとしょうべきだ』って、それで同録にしたの。『いいじゃないか、そこで失敗しても。失敗しても失敗したまま出すのは、僕のプロデューサーとしての役目だから。そこで名前を出したくないなら出さなくていい』って、そこまで言ってくれたのね。じゃぁ、同録でやりましょうって。
誰:ふ〜〜〜ん。
修:めっちゃくちゃ緊張したよ。
誰:あは?え〜〜?緊張したの?(笑)ほんとに?
修:いやいや、したよ。
誰:あんまり緊張しないと思うな。すごい、いさぎいい人だから。たまたま出たものも、それがたとえ真似って言われても、自分にないものは出ないじゃないですか?だから自信を持つべきなんですよね。たまたま出て、今日は調子が良かっただけなんだよって、ジェラシーで(人のこと)そう言う人がいても、自分にないものは出ない。まぐれっていう言い方もあるかもしんないけど。そんなこといちいち、私がポテト食べながら言うことじゃない、そんなことぜ〜んぶわかってる人だから。緊張はまぁ、そりゃするでしょうけど。
修:ふふふ。
誰:そこで!英語をしゃべった小池修。
修:はい!!
誰:青柳さんがもんのすごい絶賛してましたね。小池さんがこれまでもずっとね、世界に通用する音楽とか本物の音楽をやろうってしてきたけど、既に素晴しいのに、もっと素晴しくなるために、自分のアルバムをそうやってレコーディングする時になったら、以前はホテルでドライヤーも借りれなかった人なのに(笑)
修:あははは(笑)
誰:ちゃ〜んとしゃべってた。『それを聴いて僕(青柳さん)は本当に、小池さんの「やるぞ」という決意を感じた』って言ってました。
修:ありがたいことです。(照)
誰:一日でやって、曲とかはどうやって選んだの?
修:パーカーのウィズストリングスを聴いて、自分の気に入ったものを4曲選んで。
誰:それと後はミシェル・ペトルチアーニさんさんに捧げた曲を含む小池さんのオリジナル曲。そいで今度、またNYでやるんでしょ?
修:ヴォリューム2ね。それがロスのが仲々評判よくて、まだ出てないんだけど、業界の人たちに評判がよくて、じゃぁもう一枚作ろうかって。今度はそのプロデューサーは、曲目も教えてくれないの(苦笑)。いじめでしょ?
誰:それ、なんかさぁ。ゲームの「**君の冒険」みたいだね。(笑)
修:そうそうそう。(笑)
誰:バージョンアップしてって、「今度はNYだ!」って行って、でも何が出てくるかはわからない。
修:で、編成とね、誰が来るっていうのかは教えてくれるけどね。
誰:今度はNYの人とやるんだ。
修:そう。
誰:ストリングスかどうかもわかんないの?
修:それは、ストリングス。Vol.2はNYのストリングス。
誰:へえ、何かすごいな〜〜。NYがすごいとか自分が今いるところがすごくないじゃなくて、既に一流だと認められている人なのに、次の段階にもっと頑張りなさいよと言ってくれる人と出会えることがすごいね。
修:それはそうだね。それはありがたい。僕はね、ほんっとにそれは恵まれてるの。色んな人に色んな意見を言ってもらえるし。
誰:それは、小池さんが求めているからですよ。
修:うん、不安なのかな?周りが?俺を見てて不安になるのかな?「大丈夫かなぁ?あいつ?」って。
誰:・・・誰もそんなこと思ってないですぅ。でも、それはやっぱりすごいことですよ。小池さんがすごい人だから、で、求めてるから、柔軟だから、そういう人との出会いがあるんですよ、きっと。人間はね、こういう人に出会いたいとか、こういうことしたい!と思うと、その思いはテレパシーになって、地球を半周するんだって。
修:えぇ?(半信半疑)ほんと?
誰:うん。オカルトじゃなくて、そういうことを実際に研究してる先生がいてね。絶対にね、自分が求めている人とは出会えるんですよ。この地球上で。だから小池さんは自分ではそんなにはっきり意識してないかもしれないけど、そういう風に、もっとすごい「スーパー小池修」になりたいと思ってるから、そういう人と出会えるんですよ。でも「もう別にこれでいいし〜」「十分だし〜」って思ってたら誰も意見も言わないだろうしね。アル・シュミットさんもよかったですか?
修:もう驚きました。ま、当然ですけど、想像した以上にすごかったから。
誰:いくつぐらいの人なの?
修:もう70近いんじゃないかな?とにかくプロフェッショナル。まぁ、日本のエンジニアをどうのこうのって言うつもりはさらさらないけど。一つだけ違うのは、僕が英語が全てわかるわけじゃないから、わからないけども、くだらない無駄口はたたかない、本番中。音楽のことにすごく集中してる。それはむこうのプレーヤーもすべてそう。今回たまたまそういう人たちばっかり来てくれたのかもしれないけど。例えば、日本のスタジオみたいにね、曲と曲のリハーサルの間にちょっとストリングスの打ち合わせをしてて、弦の人の譜面のチェックをしてる時に、じゃぁ残りのピアノトリオが何をしてるかっていうと、日本人だったら『ねぇ今、何の車乗ってるの?』『ポルシェ?』『いいよねポルシェ』っていうような話しが100人中90人あるね。
誰:雑談ってこと?
修:雑談が雑談じゃないのね、無駄話。雑談の中には文化があるはずだから。僕にはそういう日本の人の話の中に文化が見えないのね。まぁそういうこともあって、スタジオの仕事やめたんだけど。
誰:うん。
修:そうじゃなくて、(ロサンゼルスの)ピアノトリオはずっと弦を聴いてるの。で、僕に訊くの『あそこの弦はこうだけど、大丈夫なのかな?』って。で『これは僕のアレンジじゃないから今わからない、アレンジャーは今あっちにいるから』っていうようなね。全て集中してる。もちろん僕が聞いてないところでね、彼等は彼等で『今晩何食べに行く?』っていう話しをしてるはずなんだけど。だけど、耳はダンボなの。日本の人みたいにって言うと語弊があるけどね、全ての人じゃないけどね、他の人が演奏している時に、そこにいる自分のミュージシャンの価値を忘れて、ただの、う〜〜ん、なんていうかな「立ちんぼ」として雑談してないの。何を話してても音楽第一。それはアル・シュミットもそう。僕がブースにいる時でも、気をつかって冗談とか言ってくれるんだけど、常に僕たちの話しを聞くふりをしてもっと大切なのは、耳がスタジオを向いてるってこと。それはすごく感激したね。
誰:う〜む、なるほど。
修:だからエンジニアにして、ディレクションが出来るんだと思うの。始まった瞬間に「あ、やばい」と僕が思ったとするでしょ?それはストリングスの人みんな思ってると思うの。で、まず一番にエンジニアのアル・シュミットが『もっかいやろう』って。それはやっぱりみんな彼を尊敬する一つのところだと思う。それは彼がおせっかいとかでしゃばりじゃない訳。彼にもプロとしてのプライドがあるから、間違えた音を録りたくない。一体となった音を作りたいって、多分そういう意識だと思う。
誰:すごい経験をされた小池修さんです。
修:長いよね。熱弁してるよね、はは。(照笑)
誰:ううん。いいんですよ。それで、えっと、小池修バンドもレコーディングがあるんです。
修:はい、あります。
誰:もうやってるんですか?
修:もうすぐです。(*注:このインタビューの段階では始まってませんでしたが、既にレコーディングは終了、無事99年10/21にリリースされました!)
誰:いつもライブやってるバンドのメンバーで、日本で。
修:そうです。
誰:リリースラッシュですね。リリースは今年?
修:10月21日です。
誰:10月21日?(驚)もうすぐじゃないですか?また来年にもそれ(ストリングス)が出るし、え?小池修バンドのレコーディングは初めてなの?
修:初めて。
誰:みんな待ってます。niftyのFfusionっていうフォーラムがあって、そこでもちょっと名前が出てました。『小池さんは多分もうすぐアルバムが出る』ってなことで。
修:ふむ、それは知らない。
誰:なってたんですよ。そっちの方のアルバムはどんな感じになるんですか?
修:そっちの方のアルバムは、う〜〜ん(しばらく間があって)かなりいいです。(笑)
誰:ははははは(笑)
修:って言っとこう。
誰:あははは、かなりいいですって、どういう風に?(笑)
修:いや、わかんない。まだ、録ってないからよくわかんないんだよね。まぁね、フュージョンなんだけど・・(間)・・その・・(間)・・なんていうかな。ソロももちろん重要な位置を占めてるんだけど、曲もね、曲も聴いて欲しいなっていうね。
誰:小池さんの曲、素晴しいですよ。
修:いやいや。
誰:かなりいいアルバムだそうです。(笑)
修:わかんないです、まだ録ってないですから。失敗するかもわかんないし。
誰:話はまたサックスプレーヤーのことになるんだけど、小池さんが思うサックスプレーヤーの条件。俺を含めて、サックスプレーヤーはとにかく自由だけれども、最低こうあって欲しいと思うのはどういうものですか?
修:う〜む。数年前までは、すごく固いというかね、まぁちょっと一種独特な考えを持ってたんだけど。それは、さっきのお祭りの話に通ずるかもしれないけど、フリーフォームじゃなくて、いわゆるアカデミックなことで表現をしようと、例えばドレミファソラシドにルールがあって、そこで表現をしようとするプレーヤーがいるとすれば、やっぱり気をつけて欲しいのはピッチとかね。うん。そういうのは数年前まで思ってたの。例えば、坂田明さんがフリーフォームで吹くじゃない?あの人はアカデミックなことをするよりも、自分の表現をフリーフォームでやろうとするじゃない?それがたまたまサックスだったわけ。そこにはドレミは必要ないわけ。自分の訴えたいことをサックスで吹く。だから自由に吹いていいし、それがサックスじゃなくてもいいわけ、坂田さんにとっては。サックスが一番表現しやすいだけで、例えばサックスがそばになくても表現できる力を持ってる訳、あの人はね。例えばお皿を割ってみたり、なんかパイプがあればそれに口をつっこんでウ〜ンて言ってね。それがフリーフォームの第一条件なの。だけど、そうじゃなくアカデミックな方向に進んでいる人。いわゆる音符を読んでドレミファソラシドで表現をしようとしている人。そこには大切なルールがある。うん。ドはどこへ行ってもドなわけ。それがグループサウンズの第一条件だと思ってたのね、数年前まで。だからやっぱり『いいんだ感情だけこもってれば少々音程が悪くても』って、そういうプレーヤーとは一緒にしなかったの、昔。だって出来る人がおもしろくなくなるから。それが出来てる人が、そこには立ち入ることは出来ないわけじゃない?聴いてる人はそっちのほうが良かったりするわけじゃない?感情の問題だから。
誰:それって数年前まで固く信じてた時って『あいつ恐いしな〜』とか『バリバリでギンギンだよな〜』とかって言われませんでした?
修:言われた時もあったかもしんない。気がつかないうちにね。例えば極端な話し言うとね。ミって押さえてるのにファが出たら楽器ではなくなるわけじゃない?じゃどこまでミを追及するかってとこまで僕は研究していいと思う。それで仕事してる人がいわゆるスタジオミュージシャンだから。ただ、そんなこと言っても、それだけじゃないっていうのもわかったわけ。それは前からわかってたんだけど、認めたくなかったのね。そこは、どうしても最後の砦だったの。そこでは勝負したくなかったのね。うん。だけど、最近やっと、なんていうかな?ちょっと大人になったかな?そこだけじゃない音楽の価値観っていうのもすごくわかってきたしね。まぁ、それがいわゆるスタジオをやめて、ライブシーンでは新参者だって言う由縁なのね。僕がおもしろくてライブやってるっていうのはそこなの。
ライブをやり始めた頃は気になってしょうがなかったの。2管3管でやる時に、何故合わないんだろう?何故この人たちは合わないのに譜面読んでるんだろう?譜面にドレミソって書いてあって、読める技術も持ってるし、それで表現しようとしてるのに。譜面読めない人だって音程はしっかりしてる、逆に言えば。でも人前で譜面台立てて、譜面置いてドレミで表現してる。なのに合わない。どこで勝負してるんだろう?って。ものすごい嫌だった、ライブ始めた頃はね。でもいざ吹いてみて、やっぱりリスナーがそれを受け入れたり、こっちも時々ぞくぞくってするシーンが出てきたりね、その人のプレイに。
そうすっと本当は理想は一つなんだけども、僕の思ってる理想はね。そこの理想に近づくための過程として、ピッチがいいのも過程の一つにしかすぎない。だけど今はピッチ悪いけど表現能力はある人。それも過程の一つ。みんなが同じピッチのいい過程で行けば、世の中同じソロになっちゃう。それがわかってきた。ここ何年ね。だから面白い。テナーサミットだってそう。あんなピッチの合わない4人はいないわけで(笑)。でもそこではないわけ。彼等の持ってる理想と僕が持ってる理想と最終的には同じはずなの。自分の表現だけで人を感動させて、そこの過程が違うだけでそれを僕と同じルールで適応するっていうのは、それは僕のエゴだなってのが何年か前にわかったの。誰:それで、サックスプレーヤーの条件は?
修:だから、だから、本当はピッチがよくてね、アカデミックなとこで勝負するならね。それが要するに100%のものはないけども、そこを求めて毎日を過ごすっていうのが条件かな?
誰:もっと自分を鍛練していって。
修:そうそう。
誰:それが出来る人ってこと?
修:そう。理想にむけて自分が進んでるんだってことを明確に、う〜む、まぁコントロールしてくとおもしろくないけどね、音楽的に。コントロールは出来なくてもいいと思うんだけど、とにかく理想を常に追い求めてる人。追い求めながら吹く。
誰:それは、音色とか、そういうことも
修:音色も、ピッチも、表現力も。その順番はどうでもいい。例えば自分に表現力があると思ってしまった瞬間、その表現力は過去のものでしかないわけで。表現力が出来たと思った瞬間、次の課題を一緒に持ってこなきゃいけない。じゃその表現力の次にピッチ感を持ってくる。
誰:なるほど。
修:それが条件かな?
誰:インタビューしてるとね、みんな違うこと言ってる様で、同じこと言ってる様で、おもしろいです。
誰:小池さんは基礎的な練習ってします?
修:ロングトーンとかってこと?は、あんまり今はもうしないね。まぁ、しないっていうのは、朝起きてウォームアップして、毎日一時間ロングトーンをして、って、そういうのはしなくなった。それは必要ではなくなった、って言った方がいいかな?もう30年吹いてるでしょ?それが正しいかどうかは別として、ロングトーンしても、ものの5分も吹けば、昔で何時間もやってたロングトーンと同じ結果を得られるぐらいのアンブシュアっていうか、口の形とか筋肉はついてるから。そういう意味で、しないって言ったけど、楽器を手にするということに関しては、毎日手にしてる。
誰:一緒に過ごす時間はずっと毎日毎日。
修:うん。で、ちょっと恥ずかしい話しかもしんないけど、これはみんなに言った方がいいのか。いまだにコピーするしね。
誰:あぁ、好きな、誰かのいいなと思うフレーズとかでしょ?それは私もそうですよ。私は習ったこともないしね。発声練習ってしたことない。やり方わからないんですよ。だから、練習と思わないでやってると思うんだけど、気になったら、そのフレーズが自分のものになるまで、『あぁ今日はもう疲れた』か『よし!今(このフレーズを歌っている)自分がすっごく好きだ』と思うまで、昔でいう針が飛んだレコードの様にやってますね。何かね悔しいって時と楽しいって時とあって。それは自分より年の若い人のものでも、CDじゃなくたまたま耳にした歌なんかでも、おもしろいなこの歌いまわし、と思うと、ずっとやってますね。
修:うん、うん。
誰:へぇ、小池修もコピーをする。
修:うん。コピーをしてますね。
誰:Michael Breckerさんとか
修:いや、それはもう、Bob Mintzerとかね、いわゆるJewishの人達は多いけども。
誰:ユダヤ人は素晴しいです。ユダヤ人と、声という意味で言うとイタリア人と、韓国人!
修:すごいよね!
誰:歌はうまいです!
修:うん。
誰:それでは。テナーサミットで大阪・京都へいきます!このHPを見てる人たちで「テナーサミットを見にいこうツアー」みたいのを組んでいらっしゃるようです。
修:あらら!それはそれは!是非!いらしてください!
誰:「あ・誰?」もお父さんと一緒に。
修:あ!どうぞ!いらしてください!
誰:最後に、みんなにメッセージとかアドバイスとか一言。
修:はい。みんなプレーヤーなんだっけ?
誰:ほとんどの人がそうだと思います。
修:なんだろうな?「練習しましょう」なんて言うと余計なお世話だって言われるかな。
誰:いやいや、いいんじゃないですか?言う人によって、ですから。私が「ロングトーンやれよ」って言っても・・・でも小池さんなら。
修:練習方法はまぁわからないけど、例えば、練習は苦痛です。でも、それを避けてうまくなる人は100人に1人もいないと思う、だけです。
誰:それだけ?
修:へへ。
誰:こないだ、音楽の神様が自分に課題を与えるとしたら?って言う質問したら「恋をしなさい」って言うと思う、なんて言ってたじゃない?
修:はは、そうですね。恋はした方がいいですよ。恋はしてください。
誰:昔、18歳でラウンジやクラブで歌ってたでしょ?バンマスってHじゃない?でね「君ね、いい歌手になるには、もっと恋をした方がいいよ」って言われてたの。でもね生意気だったから「へ〜そうっすかね?練習もしないといけないんじゃないですかぁ」なんて(低い無愛想な声で)言い返してて、人気なかったんだけど。その当時恋しかしてなかったシンガーは歌やめてます。で、練習しかしてなかったシンガーもやめてます。
修:だからね、バランスいいのがいいってことだよ、要は。(笑)
誰:はは、でもねバランスっていうけど、「練習」の向こうに「恋」を置くところがおもしろいね。
修:どこからそれがつながってるかわからないよね。でもね、どんなに楽器を吹いてもね、毎日ね、好きな人のこと思うと手につかないことだってあるわけじゃない?楽器吹いてる時に限ってその人のことが思いつくとかね。そのプレーヤーの持ってるマインドとかエナジーとか、それが出てこないと話しになんないわけだから。コンピューターが音楽やってるわけじゃないから。テクニックの上についてくるところはそこだからね。最終的にはね。音色とね。音色もやっぱり恋の問題だと思うし、恋ってのは異性に対してだけが恋じゃなくて、例えばJohn Coltraneの音が大好きで、ってのも恋だし。
誰:そういうことだそうです。では、色んなことききたいけど、終わり!
修:はい。