第9回 腹式呼吸

 前回の内容の中でも少し触れましたが、呼吸法について述べてみたいと思います。腹式呼吸といっても実際には、肺の中に息を入れるわけです。どうしたら効率的な息の吸い方、使い方が出来るかがポイントです。


腹式呼吸の確認

 人間(ホモサピエンス)は、進化の経過の中で完全な二足歩行を身に付けた唯一の種であるといえますが、四肢で歩行する他の動物と同じように元々は日常生活も腹式呼吸をしていたと考えられます。二足歩行を身に付けたがために、浅い胸式呼吸でも生活に充分な酸素が取り込めるようになり、意識しないと腹式呼吸が出来ないようになってしまったのです。

かといえ、完全にリラックスした就寝中には、無意識の中で自然に腹式呼吸を行っています。
まずこの2点を頭に入れておいて下さい。

横隔膜ってどこにあるの?
呼吸イメージ
肺と横隔膜のイメージ

腹式呼吸とは、横隔膜が下がることによって肺が膨らみ酸素を取り込む、という呼吸です。
ではその横隔膜とはどこにあるのでしょう?実際に横隔膜を意識することによって具体的に実感しましょう。

肋骨(ろっこつ)の一番下の、みぞおちの上くらいのところを手で押さえて空咳を「コホッ、コホッ」としてみて下さい。何か動くところがあるはずです。その動いているところが横隔膜です。もし親指と人差指でつかめれば、つかんでみてください。「オエッ」とくるはずです。(私のように中年太りしてしまうと脂肪が邪魔してつかめません、トホホ・・・)
しゃっくりをしている状態を思い出して頂いても良いですね。あれって、横隔膜のけいれんですから。


腹式呼吸のイメージをつかむ練習

横隔膜の場所がわかったら、床に横になるか、立ったまま背筋を伸ばして前に30度くらいのお辞儀をした状態になってみてください。横隔膜の上くらいのお腹に手を置いてゆっくり息を吸ってみましょう。膨らむのが判りますね。

では今度は、ゆっくり息を吐いていきます。しかし、お腹の緊張感はそのまま保ったままにしておきます(これが腹圧です)。息を吐ききったら今度は息を吸うと自然にお腹が膨らむと思います。これを数回繰り返し、感じがつかめたら、普通に立っても同じように呼吸できるようにしましょう。

わき腹や背中のほうも手のひらを広げて触ってみてください。腹式呼吸が出来ていれば大きく膨らむのが確認できると思います。

簡単な確認法

犬のまね・・・走ったあとの犬のまねをしてみましょう。口を開けてべろを出して、「ハへ、ハへ、ハへ、ハへ」これが出来ればあなたの呼吸法は完璧です。ただしみっともないので、くれぐれも人前ではやらないように!


ポイント

・実際に楽器を吹くときには、素早くたくさんの息を吸い、少しづつの息を長く吐いていくことになります。このために腹圧を支えてやる腹筋が必要になるのですが、お医者さんや声楽の専門家によると、いわゆる腹筋運動によって鍛えられる腹筋とは違う筋肉であるようです。

・呼吸という言葉は、非常に良く出来ています。はいてから吸う、これが基本といえるでしょう。
どうしても吸うことばかりを意識しがちですが、ちゃんと吸うためには、まず息を吐ききってしまわねばなりません。

・よく女性の生徒さんに、「肺活量がないとサックスを吹くのは難しいですか?」という質問を受けます。肺活量というのは単に肺の容量を表す数値ですからあまり関係がありません。問題は吸った息をどう使うのかということです。楽器を吹くことによって心肺能力を高めることはできますが、肺活量そのものとはあまり結びつかないようです。


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