第17回 グロートーン

 第14回のサブトーンの項でも触れましたが、特殊奏法のひとつにエレクトリック・ギターのディストーション・サウンドのように音を歪ませるグロー(グロール)トーンがあります。以前ゲストブックの中でも話題になったこともあるのですが、詳しく解説して欲しい、というメールを頂きました。
今回は、ゲストブックの会話をもとに再構成し、まとめてみようと思います。


グロートーンってどんな音?

 15年ほど前、チェッカーズというバンドが大人気になりました。覚えている方も多いでしょう。またオールデイズ・ポップスの「ダイアナ」などを思いだして下さい(古すぎるかな?)。これらの曲中で聴く事の出来る、音が割れているようなサックスの音こそがグロートーンです。
 ロックやブルース、日本の演歌などでも良く使われますが、張りのある、迫力ある音色です。特にテナー奏者が使うことが多いですが、ほかの楽器でも音の歪ませ方の方法は一緒です。

グローしてみよう!

 方法は簡単です。音を出す時に喉の奥で「う〜」と実際の声を出し(うなり)ながら、楽器を吹くと音が歪みます。ちょうど、ハミングしながら楽器を吹くような感じですね。大きな声を出す必要はありません。鼻歌を歌うようなつもりで気軽にチャレンジしてみて下さい。

声を出すことによって声帯が振動し、楽器の音と声(声帯の振動)がミックスされ音が歪むことになるわけです。いくつか注意するポイントがありますので箇条書きにします。

  1. 最初は高音域の音の方がかかりやすいので、オクターブ・キーを押さえたA(ラ)かB(シ)くらいから練習すると良いでしょう。

  2. はじめは大きな音で吹こうとしない方が良くかかります。ピアノくらいの小さ目の音でロングトーンしながら、まずは声を出すコツをつかみましょう。

  3. とかく声を出そうとすると力が入って喉を締め付け苦しくなってしまいやすいので、リラックスして大きく喉を開くようにイメージしましょう。唇を閉じたまま「あくび」をするような感じです。

  4. 慣れないうちは、喉がむずむずして気持ち悪いですが、その場合はまだ喉に力が入りすぎているのだと思って間違いありません。すぐ慣れて来てそのうち自在に使い分けることが出来るようになります。

  5. 声を出すことに集中すると、どうしてもアンブシュアーはゆるみがちになってしまいます。絶えずノーマル・トーンとピッチを比較して練習して下さい。チューニング・メーターで確認しながら練習すると良いと思います。


 是非マスターして、ここぞという盛り上がるフレーズのところでカッコ良く使うと効果抜群です。
うなりながら楽器を吹くことが最初は難しく感じるかもしれませんが、最初からうなろうとせずに、まず普通に音を出してロングトーンして、後からうなると上手くかかることが多いです。

 曲のイメージに合わせて使ってみると良いと思います。アップテンポの8ビートやロックン・ロール、唄い上げるようなバラードのサビなどでグローをかけると効果的です。
ジャズでも特にハード・バップ系のプレイヤーは使う人が多いです。
しかし、なにが何でも盛り上がればグローというのも考えものです。グローを使うにはふさわしい曲想というものがありますので、使い方には充分注意して下さいね。


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