第20回 フィンガリング(1)

 サックスを演奏する上で指を動かすという事は、音を出すことと同様に重要な要素です。今回はこのフィンガリングについて考えてみましょう。


1.3点支持の確認

 まず、楽器を持つ時のポイントは両手親指にあります。ストラップをつけた状態で右手親指はサムフックを下から上に持ち上げる、左手親指はサムレスト(黒く丸い部分)をまっすぐ前に押し出す感じになります。
そのままの状態ですと、楽器は前方斜め上に持ちあがりますので、マウスピースを上の歯で受け止めてやるわけです。

 そのまま(口は開いたままです)楽器を前後左右に動かしてみてください。上の歯の位置が動いたり、楽器がグラグラしなければ、正しく楽器が保持できていることになります。

2.標準的な指の置き方

右手 左手

 上の写真のように、手の甲と指は楽器に対して約90度、各指は軽く曲げ(缶ビールを持つくらい)、指先でトントンと軽く叩くような感じで押さえます。ときどき女性で爪を伸ばしている人もレッスンに来られますが、説明して切ってもらうように言っています。

指を離すときも、高く上がり過ぎないように、常に指先がキーの上に乗っているような状態をキープします。

 左手親指は、右斜め上方向に向かって45度くらいの角度でオクターブキーの上に最初から置いておき、使用する時だけ指先で押さえるようにします。この時、サムレストから親指の腹が離れたり、親指が移動して押さえるわけではありません。常に同じ状態で置いておくのが正しいフィンガリングです。

右手親指はサムフックを関節の上に置きます。個人差はありますが、サムフックは多少右側(1cm位)へ傾けて地面と直角になるように調整した方が右手全体が楽になります。

3.楽器を持たないトレーニング

 指を使うトレーニングとしてはスケールや半音階、アルペジオ、などが思いつくかと思いますが、まずここでは、それ以前の根本的な筋力トレーニングとしての、指の基礎体力作りと独立を目的としたフィジカルな練習を行います。日常生活の中で簡単にできるものばかりですので、是非試してみてください。

1)指回し-1・・・写真のように両手を向かい合わせ、同じ指同士を互いの周囲をグルグルと回します。一方方向ばかりではなく逆回転もさせましょう。全部の指でまんべんなく行います。各指に柔軟性をもたせ、独立して動かせるようにすることが目的です。各指1分くらい続けてできますか?

 

2)指回し-2・・・1)の上級編です。同じ指同士の先をつけたままで、同様のトレーニングを行います。これは大分きついかもしれません。この状態では特に薬指がポイントです。
よく中音のC(ド)からオクターブキーを押さえたD(レ)へ移る時に音が裏返ってしまうことがありますが、原因は左手薬指の反応が遅い場合が多いのです。最初はまったく動かない人もいるかもしれませんが、根気良く続けて下さいね!

 

3)指上げ・・・机やひざの上に置いた指を持ち上げるトレーニングです。最初は親指を含め1本づつ上げたり、戻したりします。馴れてきたら、2本づつ動かしたり、写真のように人差指と薬指を同時に動かしたり、上がっている指と置いている指を入れ替えたりというように、さまざまなパターンを考えることが出来ます。片手だけだと簡単ですが、両手一緒に同じ動きをさせると結構難しいですよ。

いずれのトレーニングにも言えるのですが、最初はゆっくり確実に、だんだん早くしていって下さい。そして、もし筋が痛くなったらすぐやめて休憩して下さい。

 

4.楽器を持ったトレーニング

 楽器を持って間もない人は、とかく何も考えずに早く指を動かしてフレ−ズ?のようなものを吹きたがりますが、この時何も考えていない人が多いようです。しかし、優秀なプレイヤーは常に頭の中で「今、何の音を吹いているのか」ということを意識して、一緒に音程を歌っています。これをソルフェージュといいますが、無意識に楽器を吹いている状態というのはないのです。

 楽器を使ったフィンガー・トレーニングを行う際に、一番大事なことは常に頭の中でソルフェージュを同時に行うことです。まず、音を出さずに指だけを練習するのですが、この時にできれば声を出して吹こうとする音程(音名)を歌ってください。こうすることによってフィンガリングを音で覚えていくのです。。指の運動能力に知的理解を加える事によって、音楽力も養成していくわけですね。その後で実際に音を出して練習します。

1)インターバル・トレーニング
 各キーのメジャースケールで根音から2〜7度までの2音間の各音程を練習します。

2)スケールとアルペジオ
 各キーのスケールとダイアトニック・コードを練習します。

3)半音階

など、他にも3度や4度音程の平行移動や楽譜を読む練習など沢山のパターンを考えることができます。音が出せない時間でも楽器を押さえることくらいは出来ると思いますので、練習場所でお困りの方は、是非試してみてくださいね!


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