第22回 ハーフ・タンギング

 CDを聴いているとサックスの音の立ちあがりが「ニュワ―ッ」という感じに聞こえたり、音が聞こえるような聞こえないような微妙な音があるのに気づかれたことがありませんか?
そういった微妙なニュアンスを出す時に使うと効果があるのが、この「ハーフ・タンギング」です。


リードに舌をあてたまま音を出す

 ハーフ・タンギングの考え方の基本は、舌でリードの振動をミュートするということになります。決して音を止めるためのタンギングではなく、音色変化を生むためのタンギングのバリエーションとして捉えてください。リードに舌が触れているのに音が鳴っている状態を作ってやるわけです。

ハーフ・タンギングのためのイメージ・シラブルは「ズ」「ス」「ヅ」「ツ」です。口で発音してみましょう。いずれも上の歯の裏側に舌があたったまま発音している事が分かりますね?

では、今度は実際にマウスピースを咥えて練習してみましょう。
最初は音を出さずに息だけを軽く吹きこみながらゆっくりと「タズアズアズアズ」という舌の動きだけを練習してみます。「タ」は音の出だしのノーマル・タンギング、「ア」は舌がリードから離れている状態を表します。上手く出来ましたか?また「ズ」の発音の際に息が止まってはいけません。息はずっとマウスピースの中に流れていなくてはなりません。

次に、音を出しながら同じ事をやってみましょう。まず小さ目の音で吹いてみます。
音は、開放のC#でいきましょうか!
どうですか?「ズ」のところで音が消えてしまいますよね。でもそれで良いのです。

さあ、次のステップに進みましょう!!

今度はちょっと大きめの音でお腹に力をいれて(腹圧をかけて)やってみます。
どうでしょう?「ズ」のところで音が上手くミュートがかかり、こもった音が鳴っている人は正解です。まだ音が消えてしまう人はもう少し舌の先の方をリードに軽くつけるつもりでもう一度試してみてください。

ポイント腹圧が充分にかかっていないと、良い状態で舌があたっていても音が消えてしまいます。お腹を意識して、たくさんの息をマウスピースの中に入れてやるつもりで練習して下さい。

どうですか?最初は舌がムズ痒く感じるかもしれませんがすぐになれると思います。

では、先ほどの「タズアズアズアズ」を使ってGメジャー・スケールを吹いてみましょう。

ファ#
シラブル

もうお気づきの方もいらっしゃいますね!これがジャズ・アーティキュレーションの基本タンギングになるわけです。しかし、これはかなり練習しないと実際の曲やアドリブの中で応用できません。頑張って地道に練習を続けてくださいね。
 また、ビッグ・バンドなどで良く言われる「のむ音(ゴースト・ノート)」もこのハーフ・タンギングを用いて演奏します。

この応用で、単音で使うと冒頭に書いたようにデビッド・サンボーンなどが多用する「ニュワ―ッ」とか「ンナ〜」といったニュアンスを出すことも出来ます。是非試してみてください。

ハーフ・タンギングが無意識にクセになってしまっている人も良く見かけます。音の出だしが全部「ンナ〜」になってしまう人ですね。これは感心しません。音程感もなくなってしまいますし、演奏にメリハリがなくなってしまいます。注意してください。意識して使い分けれることがテクニックであるわけです。

皆さんも正しいハーフ・タンギングを身に付けてより良いジャズの演奏表現手法を身につけましょう。


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