第23回 音色を考える

 サックスという楽器は、1846年アドルフ・サックスというベルギーの楽器職人の手によって、バス・クラリネットの改良、開発の途中に、副産物として出来たという、まだ150年余りの歴史の浅い楽器です。
 しかし、現代においてはその浅い歴史ゆえか、サックスは非常に多様なジャンルの音楽で使用され、音色も実に様々です。一つの同じ楽器でこんなにも音色のイメージがバラバラな楽器は他に類を見ません。その人自身の音色が存在すると言っても良いかと思われます。

 音色については、ずっと書きたいとは思っていたのですが、このように多彩な音色がある上に、文章で表現することに抵抗がありました。誤解を生みやすい上に、私の思っているニュアンスが上手く伝わるかどうか不安だったからです。

 今回は音色を表現する言葉を取り上げ、それらを考えることによって「音色」という言葉そのものを皆さんと共に考えてみたいと思います。


 音色を取り巻く要素には、非常に沢山のものが絡み合っています。楽器本体、マウスピース、アンブシュアー、タンギング、骨格の作り、呼吸法など、どれ一つないがしろには出来ません。ここでは一般論として読んで頂きたいと思います。

良い音色とは?

1.全音域で響きが均一で統一感がある。
2.楽器本体が良く響いている。
3.魅力的である

上記3点が良い音色の3要素だと思ってください。たとえいくら早く指が動いたり、フレーズを沢山吹けても良い音色が伴なわなければ、人の心には訴えることが出来ないのです。

響きという言葉自体にも色々な奏法上の要素が含まれますが、各項目についてはこのコーナーの他のページを参考にしてください。

音色を表現する言葉とその音色を生む要素

(1)明るい(軽い)⇔暗い(重い)

・比重の軽い楽器やマウスピースで得られる音色は明るくなります。

・マウスピースは、ラージチェンバーよりスモールチェンバーの方が明るくなります。

・リードはフレンチカットよりもアメリカンカットの方が明るくなります。

(2)柔らかい⇔硬い

・比重の軽い楽器やマウスピースで得られる音色は柔らかくなります。

・マウスピースは、スモールチェンバーよりラージチェンバーの方が柔らかくなります。

・リードは薄いものの方が柔らかくなります。

(3)艶のある⇔錆びた(枯れた、渋い)

・比重の軽い楽器やマウスピースで得られる音色は艶のあるものになります。

・マウスピースは、ラージチェンバーよりスモールチェンバーの方が艶のあるものになります。

・リードは薄いものの方が艶のあるものになります。

 以上は、音色に関する表現のごく一部ですが、だいたいのイメージと基本的な考え方はお分かりになられたかと思います。必ずしもすべて当てはまるわけではありません。もちろん例外もあります。一般的にこのような傾向がある、という程度に捉えていただきたいと思います。

 良い音色を身に付けるためには、楽器本体やマウスピースも重要なファクターですが一番大切なことは、地道な練習であることは言うまでもありません。
音色は些細な要素で大きく変わります。自分自身の音色を客観的に聴き、冷静に分析して、早く自分の音色をみつけることが最大の課題と言えるのではないでしょうか?


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