第26回 パーカッシブ・トーン
以前、グロートーンやサブトーンを取り上げましたがパーカッシブトーン(アタックの強い破裂音のような音)についても解説して欲しいというご意見を頂きました。これらはいずれも特殊奏法になるわけですが、あくまでもノーマルな奏法をしっかり身につけた上でトライしてみて下さい。
パーカッシブ・トーンってどんな音
「バキッ」というような低音や、極端なsfz(スフォルツァンド)などで聞く事ができる、音の立ちあがりが良い硬い音、これがパーカッシブ・トーンのイメージです。
パーカッシブという名前の通り、歯切れ良く、リズミックでタイトなフレーズを演奏する時に使用されます。ちょっと古いですが、ペレス・プラ−ド楽団の「マンボNo.5」のサックスセクションのリフを思い浮かべて下さい。まさしくあの感じなのです。
パーカッシブ・トーンの実際
(第12回ファットリップ奏法、第14回サブトーンとあわせてお読みください)奏法的な考え方としては、サブトーンの対極にあると思ってください。
1.ノーマルなアンブシュアーの状態から下の歯(あご)を軽く前(1〜2mm)に突き出すようにします。リードの振動する面積を広くしてやるわけですね。
リードの振動する部分のイメージこの時注意する事は、決してアンブシュアの圧力を変えてはいけない、という事です。サブトーンの時にも書きましたが、変化するのは下の歯(あご)の前後の位置だけです。アンブシュアはどんな奏法をしているときでも常に一定であるべきです。
2.この状態で、通常より速いスピードの息(ろうそく10本を一息で吹き消すくらい?)を吹きこんでやります。
3.これで吹いてみて音が割れたり、ビエ〜ッというような開いた音になってしまう場合は下の歯が前に出過ぎています。ボリュームがきちんとコントロールできるくらいの位置を探して調節し直してください。
どうでしょう?タイトなパーカッシブ・トーンが出ましたか?スタカートと組み合わせると面白い表現ができると思いますよ。
多くのアドリブ・プレイヤーは低音から上昇するフレーズの時、このパーカッシブ・トーンから入って高音に移るにしたがって、レガートなフレーズに変化するという傾向が良く見られます。フィル・ウッズやマイケル・ブレッカーなどがその顕著な例という事ができます。
似たようなニュアンスを出す奏法として「スラップ・タンギング」がありますが、これは回を改めて解説致します。
クラシック・サックスの場合、サブトーンやパーカッシブ・トーンのような極端な音色の変化をつける奏法というのは存在しないと考えた方が良いと思います。あくまでもノーマルトーンの範疇での音色の陰陽をつけると考えて下さい。