第31回 ベンド奏法

 メールで「サックスでギターのチョーキングのような表現をするにはどうしたら良いのでしょう?」というご質問を頂きました。今回はこの音程を変化させるベンドについて書いてみたいと思います。


 ベンド(bend)とは本来「曲げる」という意味ですが、転じて管楽器では音程を連続的に変化させて表現するという奏法の事を指します。

ベンド・アップとベンド・ダウン

読んでお分かりと思いますが音程を上げるのが、ベンド・アップ、下げる方がダウンです。
まずはベンド・ダウンから練習しましょう。最初はビブラートの練習と同様に小さな音程の幅で音程を下げる練習から入ります。(再掲します)

あごを上下に動かす運動

1. まずあごを下げる練習をします。(これがベンド・ダウン)
中音のドの音をロングトーンしながら、下の歯を少し下に開くようなイメージで半音下のシの音が出るくらいまであごを下げてみましょう。  

注意:アンブシュアーを緩めるのではありません

2. あごを元の位置(ドの音)に戻します。(これがベンド・アップ)

3. 1.と2.を交互に繰り返し練習します。出来るようになったら他の音でも試してみてください。

あごを動かす感じが掴めてきたら、次はアップだけの練習をしてみましょう。

1. まず普通にマウスピースをセットします。

2. あごを下げた状態を先に作り、下がった音程を出します。(ドの指だったらシの音が出る状態)

3. 本来の音程が得られるようにあごを元の位置(ドの音)に戻します。

・ギターのチョ-キングと違う点は、ギターでは指は低い音(この場合だとシの指)から弦を持ち上げるのに対し、サックスでは出したい音の指を押さえておいてその音に対して下からあごの動きの変化で持ち上げてやる、という事です。

注意しなければいけない事・・・ベンドの練習をする際には、アンブシュアが定着出来ているということが大前提となります。アンブシュアがしっかりしないうちにベンドを覚えてしまうとどんなメロディーでも吹き出しをベンドから入る、いわゆるなんでも「しゃくりあげる」という非常に悪いクセをつけてしまいます。いったんこのクセがついてしまうとなかなか直りません。
また、歯を噛み上げるベンド・アップは基本的には行いません。

小さな音程の変化が付けれるようになったら、徐々に音程の幅を広げてやります。音域にもよりますが、短3度くらいまでは可能です。
さらに指の動きを加えて、例えばドの音を出すときにラの指を直前に足して、ラド〜という装飾音と共にベンドしてやればより効果的な幅広いベンド・アップとなります。
また、ベンド・ダウンしながらスケールの音などで素速く下降してやるとフォール(グリス・ダウン)というビッグバンドなどで多用される長い時間をかけたダウン効果を得ることも出来ます。試してみてください。

以前、喉の使い方で書いたように、喉のコントロールでも、あごを下げるのと同様の効果を作り出す事が可能です。咽頭部を前に押し出すようなつもりで広げることによって、より幅広いベンドやグリス・アップを作り出す事が可能になります。これがマスターできれば指など関係無しに、例えばカウント・ベイシー楽団のマーシャル・ロイヤルやデューク・エリントン楽団のジョニー・ホッジスのプレイで聴かれるような、高音域などでは1オクターブ近い変化をつけることも出来るのです。サクソフォン上達法Q&A(1)でも触れているマウスピースだけで音程を変化させる練習によってこの喉の感じは感じ取れるようになると思います。是非チャレンジしてみて下さい。


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